40*感謝(ありがとう) ページ42
「私も、ミズキさんの話が聞けて、とても楽しかったです。またいつか会いましょう。…約束、します。」
Aは窓枠に立ち、別れを惜しむ彼女らを見つめていた。
服はいつの間にかいつもの服に戻っており、化粧もいつの間に落としたのか、素顔に戻っていた。
『さあ、行こう。』
「またいつか。」
「ええ。今日の月はとても綺麗ね。なんだか、また会えそうな気がする。」
涙が頬を伝いつつ、ミズキは輝くような笑顔を見せた。
Aがリリアを抱きかかえ、瞬きの間に姿を消した。
その様子を、ドアの向こうで、ディアルが黙って聞いていた。
*
「よかったんですか?逃しちゃって。」
書斎へと戻る途中、カルヴァンが尋ねる。
「いいんだよ。それに、もともと君が勝手に呼んだんでしょ。」
「そういやそうでしたね。」
呆れたようにため息をつくディアル。
そして、後ろを振り向いて、ぶっきらぼうに言う。
「そんなに欲しかったのなら、早く自分のものにすればよかったのに。」
そしてまた前を向く。
後ろを歩くカルヴァンは、悪びれずに言葉を吐く。
「そうそう。そうなんですけどね。一晩も引き止めないまま王子が逃がしちゃうから、私、好機をつかめなかったんですよ。」
痛みが走る。
ディアルは急に脚の力が抜け、座り込む。
「お前…何をッ」
「ひどいじゃないですか。不公平じゃないですか。王子は自分の好きな人を見つけたというのに。」
胸の真ん中から剣が生えている。
否。生えているのではない。
背中から、心臓を刺されたのだ。
「そ…んなっ、こと…。俺に関係なあ゛ッ」
剣を抜かれ、後ろへと倒れる。
青い絨毯が赤く、紅く染まっていく。
その中に散らばる、黒髪がやけに艶かしく映える。
「なかなかいい光景ですね。凄くそそられます。あんた、外見も綺麗な“青年”だと思ってましたけど、死に際まで綺麗なんてなかなかないですよ。」
ディアルの目が見開かれる。
もはや声も出ないのか、唇がわずかに動いた。
なぜそれを、と。
「俺は“鑑定眼”を持ってるんですよ。相手のあらゆる情報…身長とかそんなのを視る、眼、ですね。」
まあそれはもういいんで。
一言、平淡につぶやき、剣を振り上げる。
「今まで殺した女性たちの恨みが廻ってきたとでも思ってください。さようなら。」
意識がなくなる前にディアルは見た。
憎しみに染まった、カルヴァンの瞳を。
ラッキーカラー
あずきいろ
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夜月(プロフ) - P(リン)さん» 元影猫です。そうでしたか。殿堂入りされた今では、何とも言えませんが……………お答えありがとうございます。 (2014年8月20日 8時) (レス) id: 4e87b81b48 (このIDを非表示/違反報告)
P(リン)(プロフ) - 影猫さん» 私は好評価のみ受け付けているつもりはありませんよ?そして、申し訳ありませんが私自身このサイトのシステムは理解しきっておりません。なので影猫さんの質問には答えかねます。本当に申し訳ありません。 (2014年8月18日 14時) (レス) id: e39482bc43 (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 質問です。何故サクシャサマは『好評価のみ』受け付けておられるのですか?私が評価をしたときは、95名の方が評価しておられたようですが……………このサイトのシステムは、100名ではありませんでしたか? (2014年8月17日 20時) (レス) id: 4e87b81b48 (このIDを非表示/違反報告)
P(リン)(プロフ) - kum.Aliさん» 応援ありがとうございます!とても励みになります。拙い文章ですが、頑張ります! (2014年3月27日 19時) (レス) id: c342c49956 (このIDを非表示/違反報告)
kum.Ali(プロフ) - ファンタジーって素敵ですよね!あ、いきなりすみません。読んでて文章構成もストーリ性も素敵だなぁっと思ってついコメントを…。羨ましい限りです! 応援してます。これからも更新頑張って下さい^o^ (2014年3月25日 9時) (レス) id: 058c904860 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:P(リン) | 作成日時:2013年11月2日 22時