人間に恋した死神の話

34＊非難(ひなん) ページ36

「あなたたち、何してるの？」

　しばらく罵声を浴びせられ、疲れてきていたころ。
　ちょっと怒ったような、可愛らしい声が聞こえてきたの。
　顔を上げたら、ディアル様と同じ黒髪を、ツインテールにした女の人。
　露出が多いながらも、どこか可愛らしさを感じさせる、藍色のドレスを纏い。
　淡い紫の薔薇をあしらった、白いリボンを髪につけ。
　たれた、優しそうな目の淵には、長いまつげがふちどり。
　その瞳は、ディアル様と同じ、深紅。

　あまりの美しさに、言葉を忘れて魅入っちゃてたの。

「ねえ、あなたたちよ、あなたたち。あぁ、そこの可愛い水色の子は別ね。」

　真顔で、どこか飄々としたことを言ってのけてたわ。
　そして、いきなり登場した女の人に、やっぱり3人は食ってかかったわ。

「あんたこそ誰よ。っていうか、ミズキが可愛い！？アハハッ、ありえないわ！」

「あたしはアテラス。ディアルの姉よ。あなたたちの教養の無さのほうがありえないわ。」

　吐き捨てるように言う、アテラス様。
　そして、私の目の前にいる3人は、その自己紹介を聞いた途端、さーっと顔を青ざめさせたの。

「あ、アテラス様…！？どうしてここに…！！！」

「ここが、リーディン家の別荘で、あたしがディアルの姉だから。って理由でいいかしら。」

　だんだんと声に苛立ちが混ざり始める。
　そして、最終的にアテラス様はこう言ったの。

「あなたたち…、ディアルのその顔を晒す前に帰ってくれない？あなたたちはディアルに相応しくないわ。」

　ぴしり、と、とても高いオブジェにひびが入った時のような表情をしていたのを今でも覚えてるわ。
　とぼとぼと別荘をあとにする3人を見届けると、アテラス様はこう言ったの。

「大丈夫？叩かれたりとかしてない？」

　私は全力でお礼をしたわ。
　そうしたら、アテラス様は笑顔で「いいのよ」と言ってくれた。

「それより…。ほうほう、我が不肖の弟にはこんな可愛い友人がいたのね…。羨ましい。」

　綺麗な顔を、ぐっとこちらに近づけて、こんなことをつぶやかれる。
　私は顔をまじまじと見られ、恥ずかしいのと、言葉の内容が理解できない混乱で、頭がいっぱいだった。

35＊姉弟(5月21日＊一部追加)(あねとおとうと)→←33＊意見(いいたいこと)

ラッキーカラー

あずきいろ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す