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#13 ページ14





怖くて耳から手を下ろせないでいた

『誠知…』

顔を出して窓の外を見ると私が差していた傘とマイバックを持った誠知が
公園のフェンスを簡単にまたごす


荷物と一緒に乗ってきた彼に

「落ち着いた?」

そう聞かれた時だった

ピカッと一瞬 全てが眩しくなった途端
ズドーン、バリバリバリッ

さっき居た場所の横の木に落ちた

「うわっ あぶね…」
『……』

あまりの恐怖に震えが止まらない
自分が誠知の腕の中にいることさえ
わからなかった

どのくらい時間が経ったかもわからず

「Aちょっと明るくなってきた、今のうちに帰ろ」

腕を解いた誠知が運転席に移り車は動きだした

「木が折れて焦げてるし マジで危なかったじゃん」

うっすら開けた目に映る無残な木

『ほんとだ…可哀想』
「やっと声出た」
『ホントだ…』

『誠知 ありがと。びしょびしょにしちゃって ごめんね』
「Aもよく耐えたね えらいじゃん」

すぐに着いて
マンションの地下に入ると真っ暗だった

「停電してるっぽい」
『じゃあ エレベーターも動かないね』
「階段いける?」
『うん大丈夫 誠知が一緒だし』
「よしトレーニングだな」

荷物は誠知が持ってくれて
2人で階段をのぼる

『階段も真っ暗』

スマホの照明で足元を照らしながら進む


「真っ暗でも Aとなら何とかなりそ」

私の腰を後から押しながらのぼる彼の優しさは
出会った頃から変わらない

『上林さんは ずっと上林さんだね』
「は?(笑)何言ってんの?」

「雷が苦手な Aも変わんないじゃん」
『たぶん無理だよね さっきのでまた嫌度増したし』

「こんな時だけどさ一緒に暮らしだしてよかったってマジで思うよ」
『うん私も思う』

5階のフロアに着いて部屋に無事に戻ってきた

「昼間でよかった」
『誠知がいてくれてよかった』

玄関で荷物を持ったままの誠知を抱きしめた

「Aは俺が野球以外に大切にしたいって思った唯一の人だからね」
『…』
「あら?照れちゃった?ほら風呂に入ろ!風邪引いたら大変じゃん」
『う、うん』


バスタブに2人で浸かってた

「A、俺のこと1度フッたじゃん?」

誠知に後から抱きしめられてる体勢で言われた

『フッたって…それは…」
「自惚れかもしれないけど好きでいてくれてるって思ってたからさ」

『自惚れじゃないよ 好きだったよ』
「うん だから え?ってなったけど諦めるわけにはいかなくてさ…雷のおかげもあったと思わない?」

そっか…あの夜も…

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作者名:エリン | 作成日時:2020年3月30日 18時

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