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『岩嵜選手おはようございまーーす』
俺が筑後に通い始めて少ししてから
いつもこの挨拶が聴こえていた
ただそれだけ言っていなくなる女の子
ある日 福岡に戻るためいつもより早くファームを出た俺は
車道に出る手前で 正面の畑に目が留まった
麦わら帽をかぶった 畑の主らしきおじさんと
明らかに場違いな女の子が仲良く野菜を収穫している姿だった
開けた窓から会話が少し聞こえるほど元気のいい声は
まさに いつも聴いているあの娘の声だった
(あんなに服を汚して･･･)
そう思ってしばらく見ていた
太陽の下で頬も土で汚しながらキラキラした笑顔のあの娘に
何かを感じた
翌日の朝も同じ声がする
いつもは声のするほうに顔を向け 頷く程度の返ししかしていなかった俺が
「おはよう」と答えると
彼女はきょとんとした顔で
『ありがとうございます頑張れます』と言っていつもようにいなくなった
その日の午後、練習終わりの帰りに畑のおじさんが目に入る
なぜかはわからかったけど 俺は敷地内の端に車を置いて
おじさんの畑に歩いていった
「こんにちは」
「ん？こんにちは あれ？あんた岩嵜君だろ？ありゃ〜なんてこった
こんな日にあの子がおらんとかもったいないの〜」
「あの子？ってこの前 大根抜いてた子？」
「そうじゃよ 見とったんか？」
「偶然ですけど 帰りの車から見えたので」
「そうやったんか」
「あの子とは 知り合いですか？」
「いや 岩嵜君を見に来ていて帰りに畑でこけた俺を助けてくれのが最初だった」
「優しいんですね」
「優しいと言うか 今どき珍しいほど人らしい女の子やで自然体って言うかな
あの子がいじめられてたとか信じられんよ 岩嵜君のおかげやな」
「俺？ですか？」
「そう！ここでな土いじりをしながらな話してくれたんよ
自分に負けて学校辞めてしまったんやて 最初にきっかけをくれたのは友達でドームに連れて行かれてホークスの試合を見た時に８回を投げる岩嵜君に一目惚れしたんやって まー近くで見てもいい面構えしとるな 今な あの子は定時制に通っとるんよ 将来の目標に岩嵜翔の怪我を治したいって言っとったわ」
「俺の怪我を治す？」
流石に意味がわからなかった
「あーあ 怒られるかもしれんなAちゃんに…喋りすぎたわ 岩嵜君 内緒にしとってな」
「はい わかりました」
「助かるわ」
あの娘にますます興味が湧いてきた
。
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作者名：エリン | 作成日時：2019年11月11日 17時
