はじめてのひと#78平石洋介 (ページ4)

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親友の新一の車の中

新一「Aちゃんな、こっち帰ってきてからしばらくして中絶手術受けてたみたいなんだ」

「えっ？」

新一「相手、お前だったんじゃねーの？」

俺は言葉を失った…

新一「俺、洋介が離婚したって言わなかったら誰にも言わず墓場まで持ってくつもりでいたんだ、言ったからどうってことじゃねーんだけど、Aちゃんに幸せになってほしいんよ、
いやっ、幸せかもしれねーけどさ、俺ん中ではさ…｣

｢ありがとな教えてくれて、胸にしまっててくれて、Aと話してみるよ勿論その話は聞かないけど｣

新一｢Aちゃんは日出(ひじ)に住んどるんよ、竹細工の工房をやっとる｣

「竹細工？」

新一「いわゆる職人や、いいもん作るで杵築の役場にも市長室に飾られてる」

「そうなんや」

新一「これから工房の前、通ってみるか？お前の泊まってるホテルに行く途中にあるけん」

｢うん｣

真っ暗な工房の前を通った

｢ここに Aが…｣

別府湾を望む宿泊先のホテルに入ると
大浴場に向かった

柑橘が浮かぶ露天風呂に身を沈めた

頭ん中は Aのことばかりが占め

新一の車の中で酔いもとうに冷めていた

｢A…｣

彼女が妊娠していた事実を知り
間違いなく俺の子だと思った

俺が高２、Aが高１の冬

彼女の両親が離婚することになり

母親の田舎だった杵築に帰ると言った

離ればなれになる前に洋介と旅行したいと言ったAの気持ちに当時一緒に暮らしてた
俺の爺ちゃんが旅費を出してくれて
二人で3日間の金沢旅行へ行った

スキー場隣接のログハウスで二人きり

夜は薪が燃える暖炉の前で並んで座り

沢山話した

『洋介…私のはじめての人になって』
｢俺も…｣

ふかふかのラグの上で俺たちは

確かに愛し合った

｢寒くね？｣
『暖炉の前だし洋介のカラダ温かいよ』

｢痛かったら言えよ？無理はしたくないから｣
『大丈夫、洋介…大好き』

何度も洋介と呼ぶAの声は今でも覚えてる

17歳の俺全部で愛した

はじめてのひとが Aだった

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