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人の気配と微かな音を耳に感じた
朽ちた門のそばに 座り込んだ着物姿
｢A｣
隠れていただけと思っていた彼女は泣いていた
それを見た俺は自分の無神経さが嫌になる
昔とはいえ大阪に住んでた頃
お互いに好きだったまま離ればなれになったことを思い出した
｢立てる？｣
背中に手を添えると Aは少し震えていて
｢ごめんな 俺、ただ嬉しくて舞い上がっちゃってさ、Aの気持ちも考えずに追いかけて悪かった｣
ただ首をふり ポロポロ涙を零す彼女につけていたマフラーを巻いた
｢俺ね小学生に野球教えに杵築に帰ってきたんだ、1週間くらいいるから、Aの気が向いたらメシでも行かない？もちろん野球部のヤツらも呼んで｣
『うん』
やっと聞けた返事にホッとした俺は
林さんが待つ役場へ向かった
食事のあと
久々に同級生と飲むことになった
｢洋介、家呑みで悪いなコロナ禍やけ許せ｣
｢十分よ、嬉しいし皆、ジジイになったな｣
｢当たり前や、40やぞこえーよな｣
杵築にいたのは3人で
｢おじちゃん、こんばんは｣
｢確か優希やったな、ギータのサインもろてきたで｣
｢本当に？すげーサインボールや ありがとう｣
｢よかったなー優希、野球頑張らんと｣
｢うん｣
｢そう言えばさ今日、Aに会ったんよ｣
｢｢え？｣｣
｢何？揃って｣
｢い、いや すげー引きじゃね？｣
｢どうやった？Aちゃんに会って｣
｢ん、22年は経ってんのに変わらん可愛いかったってかキレイやった｣
｢お前、子供まだやったよな？｣
｢んーとな 実は2年前に別れたんよバツついてもーた｣
｢聞いてねーし｣
｢言ってねーし やけん今、言うた｣
｢まっ仕方ないわ｣
｢洋介が今独り身なら言うてもいいか｣
｢なにを？｣
｢Aちゃんはずっと独りやぞ｣
｢うそやろ？｣
｢本当｣
｢俺さ告った事あんだよ｣
｢そうなん｣
｢で、付き合ったんやけど続かんかった｣
酒の飲めない1人がホテルまで乗せてくれると言い 話もしたいしと言われ 有難く送ってもらう事にした
｢楽しかったわーやっぱガキの頃の仲間って会ってなくてもすぐあん時に戻れんだな｣
｢なー洋介、聞いてもいいか？｣
｢ん？｣
｢お前とAちゃんは、恋人だった時があるんだよな？｣
｢あるよ｣
｢で、その…男と女の関係はあったのか？｣
｢何でそんなこと聞くんだよ｣
不意に問われた Aとの仲
あれは俺が高２、Aが高１の冬だった
。
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作者名：エリン | 作成日時：2021年1月14日 23時
