はじめてのひと#78平石洋介 (ページ1)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:5,165 hit

#1 ページ1

。

オフに入り俺は久しぶりに杵築の地を踏んだ

｢いや、随分変わりましたね｣

林｢平石さんがおった頃はまだ区画整理とかされちょらんやったろーけな｣

役場の林さんが話す方言も懐かしい

｢でも上の方の景色はあの頃のまんまですよ、懐かしいです｣

杵築市内にある石畳の酢屋の坂を登りながら

幼い頃を過ごした町並みに思いを馳せた

｢このお屋敷も保存が大変でしょうね｣

大原邸の前を歩いていると琴の音が聴こえてきた

林「拝観料だけでは賄えませんね、コロナで観光客も減りましたし」

「そうですよね…さっき聞こえてたあの琴は？」

林「あー、あれは隣の能見邸でボランティアの方が水、木、金の午後に弾いてくれてるんですよ」

「まだ、琴を置いてたんや懐かしいな」

久しぶりの故郷をスマホで撮影していると

林「撮りましょう」と林さんが俺からスマホを取りあげた

「ではお願いします」

林「おっちょーどいいや！着物姿の先生の後ろ姿を入れたら良い写真になるよ」

「えっ着物姿？先生？」

撮り終えると

林「先生、後ろ姿を写真に入れさせてもらいましたけ」

能見邸の前で先生とやらに断わりを言う林さん

俺も振り向いて礼をした

着物と同じようなデザインのマスクをした目の綺麗な人だった

『洋介？…』

その人は俺の名前を…。

。