HAWKS短いお話 Ⅱ (ページ4)

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#１内川聖一と言う男① #51上林誠知ページ4

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「せーじ俺、ホークス辞めっからな」

「マジなんすか？」

「おう、マジや」

「・・・」

１０月の中旬内さんにそう聞かされてあっと言う間に

その日が来た

皆が内さんとの時間を惜しむように積極的に話かけてる

俺は…正直、余裕がなかった

試合前の円陣の中心に内さんがいた

“ここにいればプロ野球選手みたいな感じを味わえるけど上を目指さなきゃだめだ”

晃さんも二軍で調整してた時

“二軍はプロ野球選手ではない”とはっきり
言っていた

俺だけの人生じゃない今

ここ2年の不甲斐なさが情けない

ﾎﾟｶｯ
｢痛っ｣
｢Aちゃん来てたんやな、今朝挨拶してくれて、今日は内川さんに会いに来ましたって言ってくれたわ｣
｢A来てるんですか？｣
｢いたよ外には、試合はわかんねーけど｣

｢せーじ、もがけ！いつかホークスの１をつけんだろ？一軍で引退してお前が引き継ぐって未来を想像してた事もあったけど現実は厳しかったな俺もお前も｣
｢諦めませんよ俺｣
｢当たり前やわ｣
｢Aを幸せにしたいし｣
｢そこは違うっちゃ｣
｢？｣
｢もう幸せなんよ Aちゃんは、どんな時もお前といたら｣
「でも…」
「女のほうが腹くくってたりする、男のほうが女々しいんよ俺のかみさんもそうやけん、Aちゃんも多分な」

『いざと言う時は私が働いて稼げば食べる分は何とかなる!!誠知は野球のことだけ考えてればいいの』

Aがそう言ったことを思い出した

『でも、私のことも少しは考えてね？』

あの言葉の続きを思い出したらスタンドに姿を探してしまう

２打席目の前、ネクストバッターサークルで３塁側の最前列に見つけた

俺の最愛の女性(ひと)を。

内川さんの最後の打席の前

俺のとこで雨が落ちてきた

それもん？雨？って感じの

ヒットこそ打てたけど

尊敬している師匠の“内川聖一”の
ホークスのユニフォームを着る最後の日が
こんな二軍の球場になるとは想像すらしてなかった

悔しい…そう思った

試合を終えて俺は私服に着替えてから
室内練習場にいる内さんに挨拶に行く

「お疲れさまでした、こんなとこで終わんないでくださいよ？」

「生意気言うな！またな、せーじ、お前も早く一軍に帰れ！」

車に乗ってAに電話した

『お疲れ様』
「A、今どこ？」
『新幹線に乗るとこ』

静かな車の中でスマホから聞こえてきたのは

踏み切りの音

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