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海人と正式に付き合うことになった。
これが正しい選択かはまだ分からないけど、紫耀くんを忘れる為にも、受験に向けて本格的に勉強を始めた。
苦手だった英語を好きになり、表現の楽しさを知った。英語の先生になりたいという夢を見つけ、いつか紫耀くんに認められるような大人になれたら...…そんな思いが私を突き動かした。
テスト期間中も、なるべく海人と過ごした。他クラスや先生方まで公認になった、私たちの仲。紫耀くんとは相変わらず。授業中は一度も目が合わなくなったし、私たちの関係にー切興味を示さない。呼び出しも無くなり、一定の距離を保ちながら、半年が過ぎた。
「おめでとうA！」
「ありがとう海人」
変わらず私の隣には海人がいる。ただ隣にいて落ち着く、そんなフラットな関係。
模試ではＤ判定だった私が目指してた大学に無事に合格し、海人は夢を諦められず絵の専門学校へ進むことになった。お互い別々の道に向かって歩き出す。
登校日数も段々と減り、卒業式モード。紫耀くんは２年生を受け持つことになり、私たちのクラスへは来なくなった。
これで良かった。
一時も忘れられたことなんてないけど、向かい側の塔で見かける度に胸が熱くなるけど、目が合う前に反射的に逸らす技を覚えたところだけど、紫耀くんを目指してここまで来れたよ。
「卒業式泣くかな〜」
「海人は泣きそう」
「いやいやAこそ泣くでしょ」
「泣くかもね」
どこまでも優しい海人に甘えてる自分を毎日のように嫌いになる。その " 嫌い " が上書きされていく度に劣等感と罪悪感の狭間を行ったり来たり。受験生活を乗り越えられたのは紛れもない海人のおかげだ。何も言わずにただ隣にいてくれるだけで強くなれた。ポジティブになれた。前を向けた。
……海人といれば忘れられると思ってた。未熟だった私の想いが、届かなかったこの想いが、言葉ごと宙に舞って壊れたとしても、それでも好きだった。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
