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「A！海人くん！」
「……え、」
そんな、まさか……嘘でしょ。
数秒のうちに私を呼ぶママの声が聞こえた。
「よっ」
「……うん、ごめんね電話出れなくて」
「いいよ全然。俺の方がごめん急に」
「ううん」
海人のいつもの笑顔は消えていた。高校１年の春。入学式が終わってから教室で話しかけてくれた向日葵のようなあの笑顔は、いつから見られなくなってしまったのだろうか。
「やっぱり直接謝りたかったから」
「……海人は何も悪くないよ」
頭の中に浮かぶ紫耀くんを掻き消すように自分を責めた。だけど、次に届いた言葉は私の心情を惑わす。
「俺のせいにしてよ」
小さく囁く掠れた声は静かに消えていく。どうして……、
どうして、海人がそんな顔をするの。
「……え？」
「全部、俺のせいにしていいから」
「……海人、」
「じゃないと俺、もう我慢出来なくなる」
何を……？何を我慢してるの……？ねえ、海人。
「海人、」
「今だけだから、ごめん」
「………」
「忘れていいから」
当たり前に見ていた景色が変わっていく。
抱き締められた温もりが、いつしか冷たくなっていった。
すぐそこにある現実に、目を背けた私への罰。
＿＿「海人って絶対Aのこと好きだよ！」
＿＿「だってAを見る目が優しすぎるもん」
今になって、気付いたってもう遅い。
「Aが好き」
海人の声が静かに耳元に響いた。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
