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「なんかあるなら俺から担任に言っとくけど」
「何をですか」
「悩みがあるなら俺が聞こうか？」
「あの、一目惚れって信じますか？」
「…………は？」
話の噛み合いがない時点でもう会話は成り立たないはずなのに、更に突拍子もないことを言い出す私に平野先生は唖然と言い放つ。
「え、どっか頭打った？」
「打ってたら助けてくれますか」
「は？え、ちょ、まじでどうした」
不意に触られたオデコ、優しく触れた手のひら。
男の人だった。
たった４歳しか違わないのに、こんなにも、年齢の差を感じた。
勢いよく振り払うと「ごめん、」と謝る先生。違う。そうじゃない。どうしていいか分からなくて、早まる心臓の音が先生に伝わりそうで怖くて逃げた。
「やっぱりいた」
ガラガラと音を立てて保健室に入ってきたのは海人だった。体育終わり、ジャージ姿のまま、いつものポンパドール。遠い目で見つめていれば頭をガシッと掴まれた。
「具合悪いの？」
「んーん、なんか気持ち悪い」
「それを具合悪いって言うの。バカ？」
小馬鹿にしたように笑うけど、いつも私の異変に気づいてくれる。
「……ねえ、どうしよ」
「なに？」
「心臓が痛いの、」
「……平野？」
「え？」
「恋煩いだね、それ」
海人ってよく見たら目大きいな。吸い込まれそうになる。ちょこんと隣に腰掛けて、窓の外を眺めた。憂鬱な雲が行き交う空、今にも雨が降って来そうな、そんな感覚に、やっぱり気分が悪くなった。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
