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kaito side
高校１年の春、１つ前の席に座るAに話しかけたのは俺からだった。スプレーで黒髪にしました感バレバレの明るそうな子。入学式でウトウト眠そうにしていたあの子だ！と分かった途端、なぜか俺は興味を持った。ボーッと黒板を眺める背中を叩く。
「ねえ、」
「……え？」
「AAさん？」
「あ、うん」
「俺、�盒恭た諭�
「海の人？」
「え、よく分かったね！」
「座席表で目に入ったから」
「これからよろしくね！」
「こちらこそ」
はにかんだ笑顔が魅力的だった。人の名前を海の人？って聞いてくる子は初めてだよ。いつも俺から紹介してたのに。真面目そうに見えてピアスのホール丸見えだし近くで見たらやっぱり茶髪だ。毛先からバレバレだよ。
そんなAと仲良くなり始めてから俺の高校生活が彩り始めた。もちろん、お互い男女問わず人見知りもしないタイプで、気付けば周りには沢山の友達で溢れてた。
＿＿「海人とAって付き合ってないの？」
＿＿「めっちゃ仲良くない？お似合いだし」
友達作りの一環と言ったら、それはそれで納得いかないけど俺たちはただの友達なわけで。進展なんか望んでなかった。いつも隣にいる、いわば親友？そんな関係だから。Aが何考えてるか分かっちゃうし、つーかあの子分かりやすいから。
で、まあ２年に上がっても同じクラスでビックリ。お互い彼女と彼氏が出来たこともあった。たまにAと一緒に帰る日は、彼女に勘違いされて喧嘩になったり、逆にAは彼氏に束縛されて俺との関係を切れとか散々嫌味言われたり。だから全てが面倒になって別れた。
俺に恋愛なんて不向きだ。女は面倒くさい。そう思いながらも、いつも横にいるAをなんでこいつは面倒じゃないんだろう、ってふと考えたときに浮かんだ言葉が〈 恋煩い 〉。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
