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トイレに身を潜めること40分、
明確な数字を確認すると更に
この状況が滑稽に思えてくる。
姿かたちは愚か、
名前すら知らない女の子を一目見るために、
ハードなレッスン終わりに
男二人で個室トイレにそれぞれ居残るとは。
トレーナーや他の練習生に
怪しまれない為の隠れ蓑とは言え、
状況を冷静に整理すればする程、
あまりの馬鹿馬鹿しさに
文字通り頭を抱えたくなってきた。
昨日から書き始めた新しいラップの構想を
暇つぶしにでも練ろうと考えたが、
トイレが作業場所ともなれば
インスピレーションも何もなくて、
結局ただぼうっと目の前にある
少し黄ばんだ扉を見つめている。
「……なあ、もう帰ろうよ。」
ポップなゲーム音の発生源である、
壁を隔てた向こう側に呟くように投げかけても、
数分前と同様に無視を決め込まれるだけだ。
……と思ったが、今度こそ返答があった。
「あと5分で終わるってば。」
まるで僕の方が、
聞き分けのない子供かのような言いようである。
最早反論したい気持ちすら削がれてしまって、
好きにしてくれといった諦めにも似た感情だ。
練習室の方から微かに漏れてくる歌声が、
もう少しばかり形をもって聞こえさえすれば、
ここまで退屈な思いもしなかっただろうに。
防音壁のおかげで人の声と判別できないくらいに
くぐもってしまっていて、
バラードかラップか、はたまたロックかの区別だって
つかないときている。
それから殆ど正確に5分後。
がちゃり、
これまで聞こえていた曖昧な音とは異なった
際立つ金属音が合図だった。
まずはトレーナーが退出するはずだから
少し待とうというドンヒョクの言葉に素直に従い、
無駄な音は立てないよう十分に用心をしながら、
先程まで散々観察していた扉を開く。
さあ、さっさとその“すごい女の子”を見て、帰ろう。
最初こそ興味が湧かなかったわけではないが、
8時間のきついレッスンを終え
ただでさえ疲れ果てている状態で
更に約1時間待たされているのだから、
その気持ちが萎んでしまうのは普通のことだろう。
今日の夜ご飯の献立に思考を飛ばしながら、
目の前の浮足立った弟の背中を追いかけた。
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Ray.(プロフ) - あいさん» こちらこそコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！できるだけテンポ良く更新できるよう努力しますので、お時間ある時に覗いていただけると嬉しいです。 (2021年7月20日 8時) (
レス) id: 18d9311fdb (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 更新うれしいですーー！！これからも楽しみにしてます！ (2021年7月19日 21時) (レス) id: b7f70cfb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. | 作成日時：2021年6月24日 0時
