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(You)
容赦なく盛り沢山だったレッスン初日も
漸く終わりを迎え、
空になった本日2本目のペットボトルを
廊下の自動販売機の横にあるゴミ箱に捨てる。
朝より少しだけ軽くなったはずのバックパックを
明らかに重くなった体に背負い、
エントランスを目指した。
外気は相変わらずジメジメとしていて、
先程汗を拭き切った筈の肌に纏わりつくのが分かる。
カサリと小さな音を立てた右ポケットに
先程の出来事が頭を過って、
歩きながら皺付いた紙片を取り出した。
少し滲んだ文字で歪に並んでいる数字に、
綺麗にアーチした眉毛の下
何処か不安な色を乗せた黒々とした瞳、
紅潮した頬を思い出して、口許が僅かに緩む。
とびきりcuteでsweetな男の子。
私なんかに緊張した様子を見せていると思えば、
次の瞬間には自分の電話番号を書いて渡してくるなんて
チグハグな行動が可笑しくて可愛くて
こちらまで気恥ずかしくなり
顔に熱が集まるのが分かった。
ニューヨークにいた頃は、
見知らぬ男子に
連絡先を渡されている現場を目撃されようものなら
やれナンパだのAに気があるだの
茶化されたものだけれど
ここは韓国、しかもあの底抜けに善人そうな彼は
ただ私のことを慮って
あのような行動を取ったのだろう。
初めて会う人物に、
ああも優しくできる人間は多くない。
新たな環境の中、友人も皆無と言って良い私にとって
貴重な存在だった。
丸まってしまった紙の端を丁寧に引き伸ばしては
繰り返し右手の人差し指で弄りながら、
どうしても電話をしなくてはならないワケやら
うっかり電話をかけてしまうアクシデントを思索する。
角もすっかり草臥れてしまったところで、
そんなに深く考え込む必要など
初めからなかったと思い直した。
あの子は多分、
どんなに苦しい言い訳だって信じて、露程も疑わない。
言葉を交わしたのはたったの5分程、
加えて出会って数時間だというのに
何をそんな確信めいたことをと
笑う者もあるかもしれないが
あの彼が人を疑うところを想像することが
どうしても難しかったのだ。
悩みの種が消えれば、することはもう決まっている。
何度も目で擦ったはずの数字を
今度は右手の親指で
一桁ずつ確かめるように打ち込んだら
深呼吸を一つ。
耳に押し当てたiPhoneの向こう側、
無機質な呼び出し音が途切れて
聞き覚えのあるHelloが聞こえたその時、
私の未来はきっと変わった。
《新しい場所、新しい生活に、相変わらずの私》Fin.
続く (更新停止中)
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Ray.(プロフ) - あいさん» こちらこそコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！できるだけテンポ良く更新できるよう努力しますので、お時間ある時に覗いていただけると嬉しいです。 (2021年7月20日 8時) (
レス) id: 18d9311fdb (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 更新うれしいですーー！！これからも楽しみにしてます！ (2021年7月19日 21時) (レス) id: b7f70cfb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. | 作成日時：2021年6月24日 0時
