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携帯は置いてきてしまった為
正確な時刻は不明だが、
すぐ傍の練習室から
微かに音が聞こえてくるところを見るに、
開始時刻は既に過ぎているだろう。
人助けをしていたとはいえ、
僕もチソンももうそろそろ引き上げたほうが
無難であることも意味していた。
「It was really nice meeting you Mark and Jisung!
Hope to see you soon.」
(マーク、チソン、会えてよかった！
また会えることを楽しみにしてるね。)
「N-nice meeting you too! See you around!」
(こ、こちらこそ！またね！)
こちらへ手を振って
エレベーターのある方向へ歩き出す彼女に、
手を振り返しながらも
名残惜しい気持ちが胸の奥から押し寄せる。
折角会えたのに、やっと知り合えたのに。
再び偶然に出会える確率は果たして如何程か
ぐるぐると頭の中で計算していた時、
計算式の解答の代わりにある考えが浮かび
検討なしに口から飛び出していった。
「Wait! FN!」
(待って！A！」
突然の呼びかけに振り返った
不思議そうな表情の彼女の元へ
掻き集めたもののなけなしの勇気と
最早引き返せない焦りだけを頼りに
小走りで駆け寄っていく。
先程と同様の距離まで近付いたところで
少し前までラップのアイデアを書き殴っていた
ノートの端っこに、
右手に握りしめていたシャーペンで
見慣れた11桁の数字を記した。
「Um, t-this is my phone number.
If you are lost again or something troubles you,
you can always call me.
I would be happy to help you.」
(あの、こ、これ僕の電話番号。
もしまた迷子になったり、何か困った時は、
僕にいつでも電話してきて。
助けに行くから。)
言葉が一語ずつ口から出て行く度に
心臓まで一緒に出ていきそうな感覚がした僕は
不細工なノートの端くれに目線を落としたまま
顔を上げることができない。
親指と人差し指がその紙に伸びてきたところで
初めて相手の表情を伺い知ることができた。
「T-thank you.
I really appreciate that, you are so sweet.」
(あ、ありがとう。
とっても助かる、あなたってすごく優しいのね。)
予想していなかったこちらの行動に驚いたのだろう、
最初は目を丸くした彼女が
微笑みながら空いている左手で髪を耳に掛ける。
社交辞令だろうと何だろうと、
向けられたsweetという言葉が
それまで酷使していた心臓を
癒していくのが分かった。
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Ray.(プロフ) - あいさん» こちらこそコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！できるだけテンポ良く更新できるよう努力しますので、お時間ある時に覗いていただけると嬉しいです。 (2021年7月20日 8時) (
レス) id: 18d9311fdb (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 更新うれしいですーー！！これからも楽しみにしてます！ (2021年7月19日 21時) (レス) id: b7f70cfb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. | 作成日時：2021年6月24日 0時
