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今着いたよ。もう会いたいよ、ママ。
ゆっくりとそう打ち込んだものの
最後に右手の親指が数秒迷って、
結局は二言目を削除し、
随分と可愛げのなくなった内容で
送信ボタンを押した。
送ることのできなかった、たったの9文字が
どんなに彼女の心を抉るものか、
その程度のことは私にだって分かったのだ。
会いたいなどと甘えてしまえば、
あの日の自身の決断と両親の思いを
踏み躙ってしまう気すらした。
数年前に姉が独り立ちし、
今度は私までもが異国へと旅立つと分かり、
彼らの寂しさも一入だった筈だ。
姉が親元を離れたのは13の時で
私よりも2歳若かったが、
しっかりとした彼女と打って変わって
幼い頃からお転婆娘だったこともあり、
不安も大きかったと思う。
ソウルには姉もいるからと
何とかその不安を拭おうと努力もしてみたが、
生憎彼女が妹にいちいち構っていられる程の
時間を持っていないことは、家族全員知っていた。
1か月後にカムバが控えていると
ビデオ電話で伝えられた時もあちらは朝食の合間で、
脂質制限の為の味気なさそうなオートミールを
掻き込んだと思えば、
さっさと練習室に向かっていった。
そう、彼らが気を揉んでいる理由は、
そこにもあった。
娘の一人がアイドルという職に就き
成功を収めていることに、
両手を挙げて喜べるようなら
どんなに良かっただろう。
爪楊枝程の隙間もないスケジュール、
同年代の女性に推奨されている
三分の一の脂質しか含まない食事、
専ら人権侵害の域まで
土足で踏み込んでくるファン達。
しかも、スターダムにのし上がれるか決定する要素は
運が7割、才能が2割、努力が1割。
そしてのし上がれたとして
名声をいつどのように失うかも分からず、
その時がくれば一瞬だ。
奇しくも、姉と同じ夢を追い求めることになった私に
心を痛めるのは、当然のことだった。
でもこれは、幼い頃からの、
私のたった一つの夢だから。
誰にも奪うことのできない、私だけのものだ。
それを理解してくれて、いつ何時も
サポートを惜しまないでいてくれたことは、
本当に有難く、幸運だったと感じている。
強くならなきゃ、
自身に言い聞かせるように呟いてみたところで
まだその術を知らないけれど、
誇りに思ってもらえるように最善を尽くすのみだ。
一人で立つのはまだ慣れなく酷く恐ろしいが、
両親が信じてくれた自分を信じると考えれば、
ほんの少しだけ気分が軽くなる気がした。
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Ray.(プロフ) - あいさん» こちらこそコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！できるだけテンポ良く更新できるよう努力しますので、お時間ある時に覗いていただけると嬉しいです。 (2021年7月20日 8時) (
レス) id: 18d9311fdb (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 更新うれしいですーー！！これからも楽しみにしてます！ (2021年7月19日 21時) (レス) id: b7f70cfb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. | 作成日時：2021年6月24日 0時
