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(Mark)
最後のピリオドである
1時間半のボーカルレッスンの終了が
告げられると同時に、
どの練習生も我先にと捌けていく。
取り残された僕は、
周囲の動きを耳で感じながらも
立ち上がることが出来ずに、
飲みかけのスポーツドリンクを片手に
部屋の隅で項垂れていた。
こんなミスをするなんて、イらしくない———
課題曲の途中で痰が絡んだ僕に向けられた、
トレーナーの指摘を再度反芻する。
叱責するというよりは寧ろ
落胆したような表情まで思い出されて、
瞼を閉じては奥歯を噛み締めた。
土曜日から、この調子である。
特に何もしていない時は
頭が空っぽのまま呆けていると思えば、
歌いだしたり踊りだしたりすると、
体のどこかしらに妙な力が入って
思うようにならない。
自分の体だというのに
一部が切り離されたようになって、
制御が上手く利かないのだ。
殆ど等間隔でしていた
ドアの開閉音も止んだところで、
同様に聞こえなくなっていた
床とシューズが擦れる音が、再び耳に入った。
誰によるものかなど、
態々見上げて確認するまでもなかった。
「マクヒョン、」
これ以上、誤魔化せないと解っていた。
端からこのドンヒョクという弟からは
逃げ切れないと知っていただけに、
今回も期待を裏切らずして
降伏してしまうことを思うと甚だ遺憾である。
せめてもの抵抗として
よく掃除されて塵一つない練習室のフロアに
視線を落とし続けた。
「もう諦めなよ。
どうせ話すことになるの、
ヒョンも分かってるでしょ。」
今度は憐れむような声色で呼び掛けられ、
思わず顔を上げると、
予想した通りの視線に射抜かれた。
その瞬間、
何とも形容し難い感情が体の奥深くから湧いてきて、
声にならない声で叫び出したくなる。
僕が可笑しいのも、
元を辿ればお前の所為じゃないか……！
あの子の話を聞かなければ、
あの時間まで残っていなければ、
あのフロアに行かなければ、
たらればが次々に溢れ出して、止まらなくなる。
そうだ、
ドンヒョクがショヌというやつから
噂を聞きつけなければ、
レッスン後に僕を訪ねなければ、
無理矢理僕を引っ張っていかなければ。
しかし本当は、
最大の責は己にあることもよく分かっていた。
あの日、パンドラの箱を開けたのは、
他でもない僕だった。
僕自身の意思で、彼女を見つけたのだ。
そして、僕は彼女に——————
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Ray.(プロフ) - あいさん» こちらこそコメントとっても嬉しいです、ありがとうございます！できるだけテンポ良く更新できるよう努力しますので、お時間ある時に覗いていただけると嬉しいです。 (2021年7月20日 8時) (
レス) id: 18d9311fdb (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 更新うれしいですーー！！これからも楽しみにしてます！ (2021年7月19日 21時) (レス) id: b7f70cfb07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. | 作成日時：2021年6月24日 0時
