嫌いでもいいよ。【mfmf】 (ページ16)

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めんどくさい。

ただただそう思った。
兄さんは人間不信なところがある。
でも人の親友疑うって何事だよ。

イライラしながら、髪を解いた。
ゴムを手首につけて、ため息を吐く。

兄さんの何が嫌って、
その態度。

兄さんの僕への愛情とか
そういうのは全部一方的すぎる。
家族だって思ってるのも
全部全部兄さんだけだ。

僕には弟がいる。
と言っても、こっちも異母兄弟。

その弟も歌い手をやっていて
名前が"win"。

winnerだと言いづらいから
winにしたとかなんとか。

兄さんの部屋が整うまでの間は、
実家の方に住んでいた。

winも一緒に住みたいと言っていたけど
親友にどうしても、と引き止められたらしい。

当時12歳だったっけ。一個下の可愛い弟だ。
......可愛いっていっても、顔の話だ。
実際はあんまり話していない。

家族というより、知り合いに近い。
兄さんは、同居人って感じのがそれっぽい。

ていうか僕に兄さんを奪られて相当拗ねていた。
兄さんは、僕みたいなのが弟じゃない限りは
絶対お手本のように良い兄だ。

それをひょっと出の僕が独り占めとなれば
そりゃあ前から一緒だった弟は怒るだろう。

諦めて大人しく構われる日だってある。
でも距離は一向に縮まってなんかない。
そもそも、空いたものがない。
元から無かった。

そこに無理矢理兄さんが入り込むから
溢れ出て、マイナスになってるだけ。

こんなに苛つくから
兄弟なんて概念、僕は欲しくなかったんだ。

ああ、もうッ！！
めんどくさいんだよ、ばか！！

思いっきり叫んだ。
当然声は出ない。
ストレス発散になんてならない。

深く息を吐く。
ほんの少し、落ち着いた気がした。

......そりゃあ、感謝はしてる。
引き取ってくれた人だから。
あの日、兄さんは自分から
引き取りたいと言ってくれたらしい。

声が出なくても気にせず対応してくれたし
気遣いが上手いから助かったことは何度もあった。

でも、家族かって言われたら、違う。

だから、僕は名字を変えないでいる。
兄さんは、相川家の人間。
僕は、嶺空家の人間。

それだけのことだ。