別れ ページ43
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「着いたぞ」
ドサッと何処かに降ろされる感覚が体に走る。ゆっくりと瞳を開ければ、そこには夜桜が舞っていた。背中に当たるヒンヤリと冷たい石の感触がして、私は「ありがとうございます…」とか細い声で伝えた。
ここは、銀さんのお墓。
私が最期を迎えるのだとしたら、ここが良かったのだ。ここには銀さんは眠っていないけれど、銀さんの魂が在る場所だから。ここなら、もしかしたら会えるかも知れないと思ったのだ。
「残念だな、どうやら外れらしい」
「みたいですね…」
辺りはシン、としており誰もいない。こんな夜更けに墓場、というのは少しばかり怖い気もするが高杉さんはさして気にした様子もない。私はぼんやりと桜の木を見上げた。
「綺麗…」
舞い散る桜の花弁が雪の様に見える。焦点の定まらない目で見ているからなのだろうか、ぼんやりとした薄桃色が雪の様なのだ。高杉さんは私の前に屈むと頭に乗った花弁を取って、フッと笑った。
「何が…可笑しいんですか?」
「いや?」
長い指先が顎に掛かる。前にも思ったのだが、何しろ見目が良い所為でこういう所作が様になるのだ。本当に俳優みたいである。
暫し見惚れていたら高杉さんは「勿体ねェな」とこぼした。何が勿体ないのだろう、私は小首を傾げる。
「強く、気高く、…そして美しい。てめェは銀時なんぞじゃなくとも良い相手が居ただろうなァ」
そんな意外な言葉に私は思わず笑ってしまった。「高杉さんみたいに格好良い人に言われると、お世辞でも嬉しいです」と私は笑う。これは大きな冥土の土産が出来てしまった。
「世辞は言わねェタチでなァ」
「それなら尚更嬉しいです」
あの鬼兵隊の総督に褒められたのだ、これで死んだとしても悔いは無いかも知れない。心残りなら沢山あるが。
私は「ここまで運んで頂き、ありがとうございました」と言った。あとは私だけで十分である。最期は一人で逝きたい。
「A」
「え?」
「もし生まれ変われるとしたら…何になりたい?」
そうですね…と私は笑う。その答えは昔から変わらない。私は『私』が良い。そして、当たり前の日々を生きたい。
「そうしたら…今度は貴方がどうして哀しい目をするのか、理解も出来るかも知れませんね」
そう言うと高杉さんは「そうだな」と言い残し、その場から立ち去った。もう二度と会う事もないのだろう。
「…さようなら」
呟いた言葉はきっと届かなかったと思う。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時