拝啓××様 4【銀魂】

せめてもの ページ22

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「今日は」


真っ白な部屋、無機質な空間。
夕暮を見つめる背中が私の声に反応して振り返る。綺麗なのは相変わらず、真っ白に染まる髪すらも今は夕日に照らされてキラキラと眩いほどに輝く。それは、いつか見た銀さんの銀髪に良く似ていた。


「あら…その声はAちゃん？」
「そうですよ、お妙さん」


目の前のお妙さんは目を細めて微笑む。多分もう殆ど目は見えないのだと思う、だから今は声だけが頼りなんだと…私は切ない気持ちでお妙さんを見つめる。

白詛の病魔の進行は早い、しかも確かな対処法は一つも存在しない。刻一刻と確実に感染した人間の命を削り取る様は、あんなにも強くて美しかったお妙さんに対しても例外なかった。

私は近場に備えてあるパイプ椅子を開くとそこに腰を落ち着けて「お加減はいかがですか？」とお妙さんの手を握る。


「そうねぇ…新ちゃんが毎日来てくれるから何も不便は無いわ。たまに九ちゃんも来てくれるし…それに今日はAちゃんが来てくれた。本当に…嬉しい」
「お妙さん…」


弱々しく彼女は笑う。あんなに快活としていたのに、あんなに元気だったのに…会う度にお妙さんは弱っていく。それが悲しくて、何も出来ない無力な自分が不甲斐なくて、悔しくて。私は何も言えず…ただ、お妙さんの手を握った。

暫くの間そうしていたら、不意にお妙さんは「何か…話したい事があって来たんじゃないの？」と私の顔を見て笑った。今はどこまで見えているのだろうか、目は弱っていても相変わらず彼女には見えるのだろうか。人の心の内が。


「局長が…帰って来たんです」


迷いながらも私は静かな声でそう告げた。彼女の手がピクリと僅かに動く、暫くの間の後に「そう…」とだけ返事が返ってきた。

局長はお妙さんの事が好きだった。お妙さんは局長の事が好きだった訳ではない、寧ろストーカーとして扱っていた。

だから、こんな報告は要らなかったのかも知れないが…私達がお妙さんの事を局長に言えないから、せめてお妙さんには局長の無事を知っていて欲しかったのだ。


「元気…？近藤さん」
「へ…！？」
「だから、近藤さん。元気かしらって」


お妙さんの質問に目を丸くする、まさか彼女の方から局長の近況を聞かれるとは。お妙さんは別段いつもと変わらない表情だったが、私にはその真意は掴みきれず「げ、元気…です。とても」と妙にたどたどしい口調でそう言った。

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