拝啓××様 4【銀魂】

簡単な言葉 ページ21

桂さんは死んだ魚みたいな目をして怠そうに頭を掻きながらそう言った。多分これは銀さんのモノマネで、だけどあまりにも似てなくて。


「全然似てませんよ…！！あははは！！」


あまりの雑さに私もお腹を抱えて笑ってしまった。本気で失礼は承知だけど、長年の付き合いという割に全然似てない。これは銀さんが見たら怒るだろう。

涙目でヒーヒー言う私を見て桂さんはニヤッと笑った。してやったり、と言いたげな彼を見て私はまだ収まらない笑いの尾を引きながら「何ですか？」と聞く。


「やっと笑ったな」
「え？」
「やはり君は笑顔が一番だ」


笑顔を見れて良かった、と桂さんは安堵した様に優しく笑っていた。私は無意識に笑っていた自分の頬に手をやる。最後にこんなに大笑いをしたのはいつだったか、知らず知らずの内に私は笑う事も忘れていた。

私はそれに気付いて、何だか悲しくなって俯いた。いつの間に当たり前に笑えてた自分が遠ざかってしまったのか、いつの間に私はこんな顔ばかりする様になったのか。前と同じ笑顔で銀さんを迎えたい…そう思っていたのに。


「そんな顔をするな」


桂さんは弱った様に「君にそんな悲しい顔をされては俺が銀時にどやされる」と言う。私は「ごめんなさい」としか言えなかった。ただ、謝る事しか出来ない。

たまに、思う。
もしもあの日、銀さんが最後に『また、明日』と言った日。あの日に私が銀さんの事が好きなんだと伝えていたらどうなっていたのだろうか。

私はあの時銀さんにフラれてしまうのが怖くて怖気付いた。けれど、もしも…もしも銀さんも私の事が好きだったとしたら？そうしたら銀さんは何て答えたのだろうか。

『明日』という約束が本当に叶ったのだろうか。それは…もう今更過ぎて分からない事だけど、だけど銀さんは私の側に居てくれたのではないか。

もし、そんな未来があったのなら…私はあの日に戻って銀さんに「好きです」と言いたい。たった4文字の簡単な言葉、それが私には一番難しくて言えなかった。こんなにも好きなのに。


(ごめんなさい…)


誰の所為でも無い。
もし私が「好きです」と言えていたとしても銀さんは居なくなってしまったのかも知れない。

だけど私が待ち続けている『明日』は未だに訪れなくて、どこにも無くて。銀さんは5年経っても見つからなくて。

当たり前の様に『明日』を消費し続けた私は、いつの間にか銀さんに「ありがとう」も「ごめんなさい」すらも簡単に言えない距離に立っている。

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