拝啓××様 4【銀魂】

奪還作戦 ページ3

見上げる空はどんよりとしている。今にも雨が降り出しそうで、ここ数年はずっとこんな空ばかり見上げていたような気がする。

それも鬱屈した気持ちになってしまうのだけれど、今日はそれも悪くない。寧ろこんな日にはこんな空がぴったりなのである。

長く伸びた髪が腰で揺れる。足に装着したホルダーからは使い慣れた銃が見え隠れする。私はぐっと拳を握った。


「良いか、チャンスは1回だ。絶対ェに逃すんじゃねーぞ」


副長の緊張して小さな固い声が聞こえる。私を含め皆は互いに頷き合った。失敗は許されない、私達は今日の為に幾度となく作戦会議を重ねたのだ。

刻一刻とその時は迫る。
皆も私も…固唾を飲んでその時を待つ。やっとこんなチャンスが巡ってきたのだ、私は銃へと手を掛けた。


「行くぞ」


決意めく副長の声、私達はそれぞれに目標に向けて飛び出した。大切な、あの人を取り返す為に。


「行けェェェェェ！！野郎共ォォォォォ！！」
「「「ウワァァァァァ！！！！！」」」


今日は元真選組局長、近藤勲の死刑執行日。そして…攘夷一派桂小太郎さんの死刑執行日でもある。だから、今日は真選組も攘夷派も関係ない。そもそも、もう私達だって真選組では無いのだから。

私達は死刑執行人の間を縫って一心に局長の元へと走る。私達の大切な近藤勲を取り戻す為に、私も構わず銃を乱射する。弾は見事に執行人の持つ刀に当たり弾いてゆく。

銃の腕も、私の心も。
この5年で強くなった、迷わずに撃てるようになった。今のあの人が私を見たら…なんて、今は考える時でも無いのだけれど。


「局長！！」
「Aちゃん…！」


一番最初に局長の元へと辿り着いたのは私であった。横目で隣を確認すれば、桂派の人も桂さんの元へと辿り着いていた、良かったと私は安堵する。

手早く局長を縛っていた縄を解くと私は局長の腕を掴んで「行きましょう！」と急かすように立たせた。局長はその一連の流れを呆気に取られたように見つめ…そして小さく笑った。


「成長したなぁ」
「…！」
「暫く見ねェ内にこんなに大きくなっちまって…」


私だけじゃなく他の皆をも見回して。局長は懐かしそうに呟いた。その遠くを馳せるような目に、この5年間の長さを感じて私も涙腺が緩むのが分かった。けれど、今は泣く時ではない。

私はこぼれ落ちる前に涙を拭うと局長の手を引いて走り出した。元真選組局長、近藤勲。そして攘夷派、桂小太郎。二人の奪還を成功させたとある日の出来事であった。

懐古の情念→←第3章

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す