泡沫の記憶Ⅵ (ページ8)

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"悪い事なんて何一つしていない"

"私はただ、救けたかっただけなのに"

自分を肯定する言葉すら浮かんでしまう。

"そう、全部あいつのせいだ"

"あいつが全部仕組んでいたんだから"

"事情がどうあれ、最終的にオールマイトは来てくれた。でももっと早く来てくれてたら…"

『ちがう……違うの』

本当は、心がそう叫びたがってる。

自分は悪くないと。

………それじゃあ、ダメだ。

「そうだよ…そんな状況じゃ判断なんてできるはずない！ウチやったら無理！動けへんわ」

「そうだぜ、間違ってねーよ！」

『…や……』

心の奥底では、求めていた言葉たち。

たけど、いざそう言ってもらえた時

反対に心はそれを拒絶する。

『私は……そんなんじゃない…』

ただあの時判断を間違えて、父親を死なせてしまった

それだけの存在。

「Aさんに、ずっと言いたかった事がありますの」

そう言ったのは、百ちゃん。

「ショッピングモールでは言いそびれてしまいまして」

『………ショッピングモール…？』

「体育祭の時、私はAさんの言葉で変わるきっかけを貰えました……私は、Aさんに救われましたわ」

「ヤオモモ……」

響香ちゃんが思うところがあるのか、百ちゃんの肩にそっと手を置く。

「だから…ありがとうございます」

『……ッ…やめて…』

「Aさんは、Aさんが思ってる以上に、たくさんの人の心を救ってますわ」

『百ちゃん……ちがう…』

優しい言葉に、心が揺れてしまう。

どうして私の周りには、こんなにも優しい人たちばかりなんだ。

＿＿＿＿＿苦しくて、仕方ない……

「A」

『……しょうと、くん』

「俺に本気でぶつかってきたあの時の感情は……嘘じゃねえだろ」

『っ…』

「人の為に必死になれるお前は、昔から変わらねえってことだ」

『やめて…お願い…』

どんどん私を締め付けていく、罪悪感。

「そうだよ、Aちゃん」

『出久……』

「困った時に駆けつけてくれる……君はいつだって、僕のヒーローだった。だから…」

「…るっせえよ…ごちゃごちゃとよォ…」

出久の言葉を遮る声。

ガン！と扉を叩く音。

怒ったような表情の勝己が、そこにいた。

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