泡沫の記憶Ⅵ (ページ4)

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『大丈夫…私が、救ける……』

「これ以上は持たん…！ダメだ…お願いだから」

『何で…やだっ…！置いてけないよ……お父さんっ』

「A……ッ頼む……！言うことを聞いてくれ」

『お父さん……』

．

「…危ない！！」

．

"なんとかしなきゃ"

"私が"

伸ばした手が、父の体に触れた

　

瞬間

轟音を上げ、一筋の雷がそこに落ちた。

落ちる直前、強く体を押され

父が遠くなる。

伸ばしたままの手の向こう

ゆっくりと流れるその映像の中

父の口は、何かを伝えていた＿＿＿＿＿

＿＿＿＿＿

＿＿

"お父さんは、いつだって救けにきてくれるね"

"当たり前だろ？そのためにヒーローになったんだから"

"じゃあ、誰がお父さんを守ってくれるの？"

"お父さんは、自分で守るんだよ。自分の事はね"

"そしたら私が守るよ！強くなってお父さんを守るの"

"そうか？頼もしいなあ"

"そしたら、お父さんも悲しい気持ちにならないでしょ？"

"ああ、ありがとう、A。父さんは嬉しいぞ！でもな…"

＿＿＿

＿＿＿＿＿＿＿＿

『……ぅ…さん…』

「…A……」

光は消え、シンと静まった空間。

焼け焦げた匂いと

全身の力が抜ける感覚。

少し遠くには、倒れている父。

「や……そく…してくれ」

『おとう…さん…ッ！』

"その個性は、力の弱い人たちを救ける為に使ってくれ"

「母さん…を……守って……」

『うん…！うん！約束するよ…でもッ…お父さん…嫌だよ……』

「ありがと、う…無事で…良か…た……」

『ごめんなさい…ごめんッなさ……私のっせいだ……わた、私が…！』

判断を間違えなければ

救けを呼びにいくべきだった。

自分の力を過信していた。

『やだよお父さん…ごめんなさい…ごめんなさい』

「…ありがとう……A」

ポロポロと溢れてくる涙が止まらない。

嗚咽が混ざって上手く喋れない。

歪んだ視界の中、ぎゅっとその手を握った。

．