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バタバタと皆が病室を出て行く。
その姿を見送りながら
そこに残ったのは自分と＿＿＿＿＿
「…意外。君は行かないの？」
伏せていた顔を上げ、少し意地悪く笑う光さんだった。
「……何か隠してますよね」
そう言うと、「バレたか」と呟いて、サラリと髪を耳にかける。
＿＿＿＿＿違和感はあった。
あんなにAを大事にしている母親が、俺達にかけた第一声。
それは、俺達に対しての言葉だった。
それに普通に考えて、"いなくなった"のであればまず始めに警察に連絡する筈だ。
それが動揺からきたとしても＿＿＿＿＿
「もしかして、嘘…ですか？」
「ううん、Aがいなくなったのはほんと」
「じゃあ、なんで＿＿＿＿＿」
この人はこんなにも落ち着いているのか。
不安そうな素振りを見せていたが、どこかぎこちなくて………あれは演技だ。
「皆にはああ言ったけど……やっぱり親バカなんだ」
「？」
そう言って、ヒラリと見せてきた紙切れ。
よくよく見てみると、そこにはAの字が並んでいる。
「安心して、ちゃんと帰ってくるから。たまにあるの」
それはAが書いた置き手紙だった。
中身は、なんて事は無いような内容で。
「元来自由なのよね、あの子は」
そう言って、可笑しそうに笑った。
＿＿＿＿＿ちゃんと、帰ってくる。
その事に安心したのか、フ、と力が抜ける。
自分が思っているよりも、いなくなってしまうんじゃないかという不安に体が緊張していたようだ。
そしてまた、疑問が浮かぶ。
「なんで、わざわざこんな事を？」
「もう…ダメね、私。
やっぱり皆にはAの側にいてほしいって思ったの」
答えになってないようなその答えに、首を傾げる。
「だから、皆はあの話を聞いてどう思ってるのかなって…あんな事言っといてアレだけど
＿＿＿＿＿試しちゃった」
ごめんね、と申し訳なさそうに言う目の前の人物に
一瞬呆気に取られ、そして軽く首を振った。
「…そう言う事ですか」
それは、不安。
万が一、娘が拒絶されたら。
居場所がなくなってしまったら。
子を思う＿＿＿＿＿親心。
．
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作者名：noon | 作成日時：2020年12月1日 1時
