虚無 ページ13
皆が出て行った病室で、ぼーっと天井を見上げる。
真っ白な天井は、今の心の中みたいに何もない。
いきなり皆を集めて呼び出しておいて
自分の過去を勝手に話し
優しさでかけてくれた言葉をシャットアウトした。
何なんだろう、この傲慢さは。
人ってここまで自己中心的になれるんだな、と
他人事のように考えてしまう。
それもまた、問題だ。
『最低だ、私…』
こんな自分が嫌になるのに、
何かをしようとすればする程、どんどん嫌な自分が出てくる。
……私の人生って何だったんだろう。
たくさんの人に迷惑をかけて、辛い想いをさせて。
私自身を嫌いになって。
幸せだった過去の自分はもういない。
そんな人が、誰かを幸せに出来るはずがない。
そうしたらほら、私の夢も叶わない。
"みんなを幸せにするヒーロー"になんてなれないし
ヒーローにすら、私はなれない。
それでも何も感じない。
空っぽのまま、終わってしまうのかな＿＿＿＿＿
「A、みんな帰ったよ」
そう言って戻ってきた母は、もう一度私の横に腰掛けた。
『……お母さん、怒らないの？私のこと』
こんな身勝手な娘を。
すると母は
「母さんには全部わかるもの……Aの事も、あの人の事も」
あの人、とは父の事だろうか。
「守りたいものの為にヒーローになった…
ねえ、お父さんのヒーロー名、覚えてる？」
『ルークス…？』
「そう。意味は？」
『光……あ…』
光。
それは、母の名前と同じだ。
ソレに気がつくと、少し恥ずかしそうに母が笑った。
「まだAがいなかった頃の話よ。そして、私達のもとにAが来てくれて、守るものが増えたわ」
父は誰よりも母を守りたかった。
その為に、その名に誓いを立てた。
「私の個性は私にしか作用しない。個性が全てではないけれど、Aは守る力を持って生まれてきてくれた」
『守る力…』
「あの人が、私を守ってくれと言ったのは、Aにその身を呈して欲しいワケじゃない。
私達がいつまでも幸せでいれるように、その力を使ってほしい…そう言う事だよ」
『お母さんは、幸せだった？』
「母さんはAがいてくれるだけで幸せよ。だから」
「あなたは自分の為に生きて」
.
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作者名：noon | 作成日時：2020年12月1日 1時
