side緑谷 ページ11
"ごめんね"
そう言ったAちゃんは、笑っていた。
「………ッ」
でもそれは、ずっと待ち焦がれていたものではなく
今にも泣き出しそうな、そんな笑顔だった。
．
ぞろぞろと皆が病室を出て行く。
Aちゃんは、それっきり口を閉し
光さんに促されるまま、僕たちは病室を後にした。
出て行く直前、轟くんが
"ちゃんと戻ってこい。お前の居場所は、ここにある"
そうAちゃんに伝えているのを、
愕然とした気持ちのかたわらで、僕は聞いた。
＿＿＿＿＿あんな顔が見たかったワケじゃない。
そのショックがあまりにも大きくて、言葉が出なかった。
だから、最後にああ言える轟くんが羨ましく
同時に、叱咤できるかっちゃんは凄いな、と。
僕は何も声を掛ける事ができなかった。
「今日話したことは全て本当の事。
A自身に起こった、過去の事件の話。
でも、あなた達が今まで一緒に過ごして見てきたAも本当よ」
別室に移動した僕らに、そう声をかけたのは光さん。
光さんだって初めて知った真実に多少なりとも動揺があるだろうに、それを全く見せない。
全てを知って、受け入れたのだろうか。
きっと、そうなのだろう。
それは、光さんにだけわかる、一心さんの想い。
そして、Aちゃんの想い。
家族の絆が、光さんの気持ちを揺るぎないものにしている……そんな気がした。
「……みんなに受け入れてとは言わない。
今後Aをどう思い、どう接していくかは、あなた達に任せるわ」
そして、深く頭を下げる。
「そういう意味で、Aをよろしくお願いします」
信じるって、決めている。
僕だってそれは揺るぎない。
それは、長い間Aちゃんのことを見てきたから。
小さい頃から知っているから。
だけど、付き合いが浅い人の中には、突然の話に戸惑う人もいるかもしれない。
急に聞かされた話に困惑しているかもしれない。
Aちゃんの話を聞いた後の皆の反応は様々だった。
空気感こそ悪くなかったが、何も言えない人の方が圧倒的で。
もしも、万が一拒絶する人が一人でもいたら、何も言わなくてもきっとAちゃんは気づく。
そしたら、もう＿＿＿＿＿＿＿＿
．
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作者名：noon | 作成日時：2020年12月1日 1時
