泡沫の記憶Ⅵ (ページ2)

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昔話ページ2

いつもと変わらない日

いつものように皆と他愛もない会話をして

一緒に遊んで

家に帰って、お母さんのご飯を食べる

そんななんでもない日が、幸せだった。

「やあ、初めまして。お嬢さん」

雲一つない晴天の、そんなある日。

その幸せが崩れるのはあっという間だった。

「おじさん、だあれ？」

穏やかな口調で話しかけてきた男。

でもそのオーラはどこか異様で、ほんの少しの不信感を抱きながらそう返した。

だが、返ってきたのは言葉ではなく

後頭部に感じた強い衝撃。

そのまま言葉を発する事もできず、その場に倒れ込んだ。

全身で感じたアスファルトの冷たさは、今でも覚えてる。

「君の個性は素晴らしい。

僕はずっと、それが欲しかったんだ」

朦朧とする意識の中、目の前の男がそう言うのを、訳も分からず聞いていた。

そして、ス、と伸ばされた腕。

その手が触れるか触れないか

その時＿＿＿＿＿

「A！！」

聞こえた大好きな父の声。

「おやおや、君は…ああ、そうだ。唯夜一心だろう？ヒーロー名はルークス。邪魔しないでおくれ、貰ったらすぐ帰るよ」

「貰う、だと？その子から手を離せ」

「なに、他人行儀しなくても、知ってるよ。君の娘だろ？」

「…知ってるなら、尚更退いてもらうか、敵！」

バチ…と青白い光が弾ける。

それが見えたと思ったら、直後、父はその男に稲妻を放っていた。

幼いながらにもわかる、その威力とスピード

それは、私が憧れた存在。

＿＿＿＿＿父が救けにきてくれて

救けられなかったことはなかった。

その安心感から、きっと今回も大丈夫

なんて根拠のない自信が湧く。

フ…と閉じた瞼。

強い衝撃をあらわすかなような轟音がしたと思ったら

どさりと、何かが倒れる音と共に

私の意識が途切れた＿＿＿＿＿

．

"大丈夫、すぐに慣れるさ"

"これで君はもっと強くなれる"

"それじゃあ"

"僕は用を済ませて帰るとするよ"

"娘には触れさせない…！！"

再び意識が浮上してくる。

遠くで何かを話す声。

そしてはっきりと意識が覚醒する直前に聞こえたのは……

"仕方ない、また来るよ、A"

．