泡沫の記憶Ⅳ (ページ5)

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『あー……と。私が居眠りしちゃってこんなに時間になっちゃったの。たまたま焦凍君がいてくれて…』

「……遅くなるし俺が送ると言った」

同意しながらそう続けてくれる。

だから早く帰りたい。

＿＿＿＿と、切実に思ったのだが。

「ぁあ゛？」

……何か更に機嫌悪くなった？

直感的にそう感じて内心ビクビクしていると、

靴を履き替えた爆豪君が、私の後ろを通り過ぎようとする………

『……ぐえ』

「帰んぞ」

その際に、ガシッと首根っこを掴まれた。

突然のことにビックリしたが、目の前の焦凍君はまた黙って爆豪君を見ている。

………何か喋って？

「てめェ、こいつんち知らねえだろ。だから俺が送ってく」

『……まあ、確かに』

そして、私も焦凍君の家が何処なのか知らない。

それでかなりの遠回りになったりしたら申し訳ないな。

そう考えて(ちょっと怖いが)爆豪君に従うべく、歩き出そうとすると

クイ、と軽く腕を引かれた。

『……焦凍君？』

突然、無言で腕を引いてきた焦凍君。

不思議に思って名前を呼ぶと、ハッとして手を離した。

「……わり、なんでもねえ。気を付けて帰れよ」

『わざわざありがとね。焦凍君も』

「ああ」

そう言う焦凍君に手を振り、引きずられるように爆豪君と歩き出した。

あの、いい加減離してくれません？

.

.

その帰り道。

やっと解放された私は爆豪君の隣ではなく、一歩後ろを歩いている。

なんとなく彼にはこの距離感が丁度いい。

黙って歩く爆豪君を後ろから見つつ、ふと空を見上げると

夕焼けに青が混ざり始め、少し暗くなってきていた。

ほんのりと光る星が見え始めている。

そういえば、前に浜辺で会った時も似たような空をしていた。

『……前と同じだなぁ……』

そう言うと、爆豪君がピタッと止まった。

いきなりだったので、ぶつかる寸前で足を止めると顔面すれすれに爆豪君の背中がある。

急にどうしたのかと聞くと、前を向いたまま声を発した。

「………なんか、思い出したんか？」

『え？』

「てめェ、忘れてんだろ。色々と」

『………な…』

何故。

爆豪君が知っているのだろう。

話した記憶は＿＿＿＿ない。

.