泡沫の記憶Ⅳ (ページ24)

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遭遇ページ24

『やっちまった』

ガヤガヤとする人混みを眺めて一言。

二人の一歩後ろを歩いていたはずが、横から出てきた人の波にのまれて逸れてしまった。

『大事な話だったのに……』

なんで私はこうなんだと項垂れるが、ハッとしてケータイを取り出す。

向こうも気付いて心配してるかもしれない。

この人混みでは合流するのも大変だろう。

ちょっと…いや、かなり残念ではあるが、場所と時間を伝えて別行動することにした。

＿＿＿＿

＿_

『…はあ』

疲れた。

しばらく見てまわったところで、なんだか体力尽きてしまった気がする。

というか人に酔った。

ちょっと休もうと、とりあえず人の少ない入り口付近にやってきた。

適当な椅子が無かったので、ふう、と息を吐いて壁に寄りかかる。

日差しは暑いが、そよそよと風が流れてきて心地良い。

ぼーっとモール内を見つめる。

家族連れや恋人同士、友達だったりと皆が笑顔で過ごしている。

ゆったりとしている人もいれば、テキパキと動く人

様々な笑い声が溢れていて心が和む。

＿＿＿＿まるでヒーローなんか必要ないんじゃないかと錯覚してしまう程に。

本当に平和な世界があるとすれば、きっとヒーローなんていらない。

そんな世界を夢見ることは簡単だけど、現実は甘くない。

溢れ返る悪と、それに対する正義。

敵がいるからヒーローがいるのだけど、その逆もまた然り。

そうやってある意味世界は成り立っているのかもしれない。

その根源を変えるのは、到底無理な話に終わるだろう。

それでも。

自分の夢や存在意義を否定する事になったとしても。

そんな世界があればいいのに、と思ってしまうのは駄目な事なのだろうか＿＿＿＿

『…………っわ』

ブワッ＿＿＿＿＿

その時、強い風が吹き抜けた。

被っていた帽子が宙へと飛んでいく。

そのまま弧を描いて落ちいく帽子の先＿＿＿＿

足元に落ちた、それを拾う青年。

そこにいたのは

『＿＿＿＿！！』

「……誰かと思えば」

ゾワ…と走る悪寒。

頭まで被っていた黒のパーカーから覗く目と、視線が合う。

「唯夜Aじゃんか」

その目が私を見て、ニヤリと笑った。

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