泡沫の記憶Ⅳ (ページ23)

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「Aさん！一緒に周りましょう」

『うん』

ガシッと両手を掴んで、真剣な顔で言う百ちゃんに返事をすると

その横で上鳴君が、クイっと親指を指しながら言った。

「あーいうのには気を付けろよ？」

『あーいうの？』

上鳴君が指す方を見ると、先程のウェイウェイしてる人達がいる。

『上鳴君系か」

「えっ！？」

「Aー、ヤオモモ。ウチも一緒に行ってい？」

『うん、もちろん』

「ええ、ぜひ」

そんなこんなで、百ちゃんと響香ちゃんと周ることになった。

視界の端では、何故かしょんぼりしてしまった上鳴君の肩に手を置く切島君。

「オレ…クツ……ホシイ」と言っている上鳴君にポンと手を乗せていた。

「目的バラけてっし、時間決めて自由行動すっか！」

という切島君の言葉に頷いて、百ちゃんと響香ちゃんと歩き出した。

.

「とりあえず、ウチ大きめのキャリーバック買わなきゃ」

『あ、私も』

「ではまずそちらを探しましょうか」

ワイワイと行き交う人々の中、3人で他愛もない話をしながらお買い物をする。

なんて平和な光景だろう。

一歩後ろに引いて、前を歩く二人の背中を見つめる。

『……楽しいね』

そう呟くと、前の二人がパッと振り返った。

「なんかAに言われると嬉しくなっちゃうなー」

そう言って響香ちゃんが笑う。

「ええ、ほんとに」

それに頷く百ちゃん。

「私……Aさんには救われましたから」

『？』

胸に手を当ててそう言う百ちゃんに、首を傾げる。

そしてまた前に進みながら、そのまま続けた。

「ずっと自信を無くしてたんです、私。同じ推薦入学者であるAさんや轟さんと比べて、なんて非力なんでしょう、と」

「ヤオモモ…」

『百ちゃん…』

でも、期末テスト以降百ちゃんは変わった。

変わったというか、前の百ちゃんが戻ってきたようなそんな感じだ。

それならきっと、変えてくれたのはあの期末テスト。

確かペアは焦凍君。

「演習試験の際、轟さんに背中を押してもらいましたわ。でも、最初に声を掛けてくれたのはAさんですの」

思い出すようにそう話す。

「体育祭の時、Aさんがくれた言葉を思い出したんです。それが＿＿」

そう言って振り返ると

後ろにいたはずの少女が消えていた。