泡沫の記憶Ⅳ (ページ3)

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名前side轟ページ3

テスト期間中ということあり、混み合っていた図書室も、気がつけば人がまばらになってきてた。

そろそろ下校時間か、と思い荷物をまとめて席を立つ。

そして、すぐに見知った白い頭を見つけた。

その後ろ姿は、窓にもたれ掛かるようにして座っている。

「……A？」

人が少なくとも、ここは図書室。

控えめに声をかけたが、全く反応が無い。

試しに顔を覗き込んでみると、規則正しい呼吸で眠っていた。

寝ているなら起こすのも悪いと思い、伸ばしかけた手を引っ込めるが

そういえば、もうすぐ学校を出なければいけない時間だったと思い出す。

「A」

もう一度、肩に手を触れて名前を呼んでみる。

『……ん…？』

微かに眉が動いたが、その瞳はしっかり閉じられたまま。

窓から差し込む西日が図書室全体を照らす。

　
そのオレンジ色の光が、白銀の髪に反射して

純粋に、綺麗だと思った＿＿＿＿

「……起きろ」

無意識に、そっと手を伸ばす。

その手は顔の近くまできて、さらりと前髪を流した。

「……………」

それでも、起きない。

相変わらず、スー…と気持ち良さそうに寝ている。

指先に残る柔らかい髪の感触。

……それに何故か、段々と罪悪感が湧いてきた。

どうしようか、と悩んでいると

『…か………つ、き…』

小さな寝言が聞こえた。

「(かつき……？)」

『……んぅ？』

謎の疑問符が聞こえたと思ったら、うっすらとその瞳が開く。

「A」

その顔を見ながら名前を呼ぶと、Aは数回瞬きをした後にゴシゴシと目を擦った。

『…………寝てた』

「みてえだな」

声を掛けると、驚いた顔でこちらを見上げる。

夕陽に照らされた青紫と目が合うと、コテンと首を傾げた。

『轟君だ？』

そう、疑問形で言うAに、思わず口が開く。

「焦凍」

『ん？』

「焦凍でいい」

『……どうしたの？』

そして、怪訝そうにするでもなく真っ直ぐに聞き返された。

「いや……俺も名前で呼んでるし」

『それは、別にいいけど。……あ、別にいいから、別にいいか』

「？」

よく意味がわからないが"別にいい"らしい。

それが何となく、Aらしいと思った。

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