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「俺は……」
1人で悶々としていたら、いきなり轟君が話し出したので、内心ビクッとする。
見ると、彼は自分の左手を見つめていた。
「緑谷にキッカケを貰った……だが、そもそもはお前の言葉が最初だった」
『それは、ほんとごめんなさい…』
「いや、いいんだ。じゃないと、俺はずっとあのままだった」
『(だった…？)』
「準決勝……ずっと迷ってた。お前にどう答えるのが正解か、それもわからなかった。だから、どうしてもお前の目が見れなかった……」
それで怒らせちまったよな、と言われて、ただただ申し訳ない。
それでも…
『でも、私の事ちゃんと見てくれた。全力、受け止めてくれたね』
「……お前が望んでたからな」
『十分、だったよ。ありがとう、私こそ、ごめんね』
そう言うと、轟君は顔を上げてこちらを見た。
『…羨ましいなあ、って思ってたんだ』
「何がだ？」
『全部。轟君の、個性も素質も、環境も。私に無いもの持ってる』
「Aだって十分だろ」
『いや……それに、お父さんにあそこまで期待されている轟君が、私には羨ましかった』
「………」
こんな事を言われても、彼は困るだろう。
それでも私の本心なんだ。
『お父さんとの間に何があるのかは知らないけど、そういう風に思う人もいるってこと』
「…ああ、そうだな」
そう頷く轟君は、もう昔のような目はしていない。
きっと精算できたのだろう、彼は。
『………やっぱ、凄いなぁ、緑谷君は』
「……緑谷？」
『だって、緑谷君のおかげでしょ？私が言いたかった事、それ以上を言ってくれてたし』
敵わないよな、と呟くと、いや…と遮られた。
「それもあるが…お前の言葉も、効いた」
『？たいしたこと言ってないよ？私？』
「……"クラスメイト"だと」
『え？」
「俺はお前を一度拒絶した。それでもお前は俺に関わろうとしてくれた。……クラスメイトだから」
なんだ、そんな事＿＿＿
『まあ、アレだよ。こんな仲間に出会えたのって…凄くない？お互いにさ』
「確かにそうだが……」
『だからだよ。
ただの私の理想。一生懸命、必死で頑張れる環境が欲しかった。私自身が成長するための環境を作りたかったの……結局は、私の為』
そう、優しさじゃない。
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作者名：noon | 作成日時：2020年9月26日 13時
