泡沫の記憶Ⅲ (ページ25)

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緑谷君と同時に、思わずその名を叫ぶ。

「解けたか。意外と大したことねえ個性だな」

そのスピードに、ステインが一度後ろへ退いた。

「轟くんも緑谷くんも、唯夜くんも…関係ない事で……申し訳ない。

だからもう、三人にこれ以上血を流させる訳にはいかない」

『飯田君…』

それは、決意した目だ。

良かった……飯田君も、気付けたんだ。

「感化され、取り繕おうとも無駄だ。人間の本質はそう易々と変わらない」

"英雄(ヒーロー)"を歪ませる社会のガン。
それを誰かが正さねばならない。

それが、ステインの信念。

そんな言葉に耳を貸すなと、飯田君に轟君が助言するが、飯田君はそれに首を振った。

「言う通りさ。僕にヒーローを名乗る資格は無い…
それでも、折れるわけにはいかない」

ぐっと拳を握りしめ、飯田君は前を見据えた。

「俺が折れれば、インゲニウムは死んでしまう」

「論外」

ブワ！！と炎が繰り出される。

それを避けたステインが、轟君に向かってナイフを投げるが、それを飯田君が庇う。

「おまれも止まれ」

そしてもう一本、投げつけられたナイフが飯田君の腕に深々と刺さった。

『飯田君…腕が…！』

それでも彼の目は諦めていない。

何かを轟君に向かって話してる。

私も行かなきゃ。

力になるんだ。

＿＿＿＿戦うんだ

バチ…

地面に触れている指先で、微かに青白い光が弾ける。

個性を使おうとすると、体が悲鳴を上げる。

腕も足も痛みがひどい。

血が足りなくて、霞かけた視界の中で

ステインが空中に飛び上がった＿＿＿＿

今！！

歯を食いしばって、前に伸びていた片手だけを地面に付けた。

バチバチ……！！

一瞬だけ暗闇を照らした光。

空中で避けきれなかったのか、その稲妻が直撃した。

そこに両サイドから飯田君と緑谷君が駆け上がる。

「行け」

『行け＿＿＿＿！』

そう強く叫んだと同時に

緑谷君の拳と、飯田君の脚が

ステインをとらえた。