2 ページ17
1日があっという間だった。
自分のミッションはさておき、ヒーロー活動というものは中々濃い。
しかも、場所が場所なだけに、緊迫した空気を少なからず皆が持っている。
『早く寝よ』
明日も早いからな、と言って大の字になっていたら、コンコン、と部屋をノックする音。
「A、起きてるか？」
『轟君か、どうぞー』
ガチャ、とドアを開けた轟君が顔を覗かしたので、起き上がって中に促そうとすると…
パタン
……閉められた。
「……何か服着てくれ」
扉の向こうからそんな声が聞こえる。
『ああ…』
確認してみるが、今の自分はキャミソールに短パンという完全オフモード。
流石に申し訳ないと思い、薄手のパーカーを羽織って扉を開けた。
『ごめん、どうぞ？』
「いや、すまねぇ。こんな時間に」
若干気まずそうに目を泳がせた轟君だったが、立ち話もなんなので、部屋にあった椅子に座ってもらう。
『ん、大丈夫だよ。なんかあった？』
「むしろAの方が何かあったのか？……日中なんかおかしかったぞ」
『おかし……』
おかしかったって。。
そう言葉にされるとちょっとへこむ。
まあ、彼なりに気にかけてくれたのだろう。
『…私にはやらなきゃいけないことがある』
「？なんだ？」
『いいの別に。気にしなくても、なんも無いよ』
「よくわかんねぇけど、何もねえなら良かった」
うん、良かった。
轟君が天然さんで。
「……前に」
『ん？』
「羨ましいって言ってたろ。それって……そういう事だったんだな」
それは病院からの帰り道。
父親から期待されている轟君が羨ましいと、確かに言った。
『うん、そう、だね…。私が記憶をなくした時には、もう行方がわからなくなってたの。だから、お父さんとの思い出とかなくて』
そう話すと、そうだったのか…と言う小さな声が聞こえる。
「俺は……親父が嫌いだ」
『……そっか』
「あいつはトップになる事ばかりに執着してる。その為の道具にしか俺を見ちゃいねえ。そして、それがお母さんを追い詰めた…」
『お母さん……今はどうしてるの？』
「…病院だ。この前久しぶりに会いに行ってきた」
そう言いながら、轟君は自身の火傷の跡に触れる。
それは意図せず、無意識に触れているようだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 85人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：noon | 作成日時：2020年9月26日 13時
