あの日手放したものをもう一度【ブルーロック】 (ページ9)

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Aがボールを見つけたちょうどその頃。

そんなAを潔と蜂楽は見つけていた。

夜眠れず練習にきた潔。

それなら一緒にやろうと誘った蜂楽たちがトレーニングルームに着くと、そこには先客がいた。

昼間ドリンクを届けに来てくれたマネージャーとは違うもう1人の方。

結局まだ一度も選手達と接していないAがそこにいた事に興味が湧く。

先に見つけた蜂楽が人差し指を口元に当てて＂しーっ＂という合図を送ると、自然と潔も息を潜ませる。

すると、Aがリフティングを始めた。

それはまるで流れるように無駄のない動きで

繊細に、正確に、ボールが弾む。

下された黒い髪が揺れながら、よく見える空色の瞳が僅かに輝いているように見えたのは気のせいか………

一度高く上げられたボール。

シュートを打つ姿勢をとったAに

潔は、気づけば内心で＂行けっ＂と声を上げていた。

が、そのボールは打たれる事なく、スローモーションの様にAの体が傾いていく。

ドサッと軽い音と共に倒れ込んだAに、蜂楽が声を掛けていた。

こちらを向いたAの目は、先程までの輝きは無くなり

無表情に戻っている。

とりあえず潔が「大丈夫か？」と手を伸ばすが、その手は取られる事なくAは自力で起き上がった。

「…………」

「潔、ドンマイ！」

『睡眠はちゃんと取った方がいいですよ』

無表情のまま言うAの声は、心配しているというよりは若干トゲがある。

それに蜂楽は「まあまあ〜」と軽く事情を説明するが、Aはただジト目で見るだけだった。

「(雰囲気変わるなぁ……)」

ふと、潔は思う。

そこにいるAは、モニター越しに見た時には分からなかったが、意外と華奢で小柄だった。

さらに今は眼鏡も外していて、よく見れば………いやよく見なくてもその容姿の良さがわかる。

サラサラの黒髪に、透き通るほどの白い肌。

澄んだ空色の目が儚く、神秘的な雰囲気を出している。

簡単に言うと美少女だ。

「あっ、そうだ！マネちゃん良かったらさ、見てってよ」

『遠慮します』

「お、おい、さすがに夜遅いし……って拒絶早くね！？」

『さっさと部屋戻って寝ろ』

「いきなり口悪ッ！」

これが心の壁なのだろうか。