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それから結が帰ってくるまでの間に大体の事は終わらせていた。
しばらくして帰ってきた結がクタクタになっているのを見て、先に上がらせる。
悪いから、と断る結だったが、なんせまだ新しい建物内。
そんなにする事も多く無く自分で1人で手が回ると言えば素直に言う事を聞いてくれた。
……のだが。
『全然終わらん……』
思ったよりも広い建物と複雑な構造。
自分が方向音痴では無いと思っていたAだが、実は周りから言わせてみれば相当なもので。
気がつけば、全部の掃除が終わったのは深夜だった。
『これでおしまい』
最後の部屋の掃除を終えたところで、部屋の隅っこに転がるサッカーボールを見つけた。
吸い寄せられるようにそれを手に取れば、自然と動く体。
『(まだ…覚えてる)』
慣れ親しんだボールの感覚は、数年のブランクがある今でも鮮明に覚えている。
眼鏡を外し、ついでに髪も解く。
そして軽くリフティングをすれば、トン、トン、と軽やかな音が部屋に響いた。
右足……左足……
思ってた以上に体が動く。
ほのかに上がってきた体温を感じながら
一度軽く上に蹴り上げ、シュート体勢に入る_________
その瞬間、ぐらりと体が傾いて
声を上げる間もなく地面に倒れ込んだ。
『痛……くない…』
芝だからか、良かった。
「あれ？マネちゃんじゃん」
『ひっ』と声に出そうになったのを必死で止める。
倒れて仰向けで寝たまま、視線を部屋の入り口に移せば見覚えのある顔が二つ。
潔と蜂楽だった。
『こんばんは、原石くんたち』
「……とりあえず起き上がらないか？」
「にゃはっ！やっぱ面白いね君」
．
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作者名：noon | 作成日時：2023年4月21日 0時
