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しん…と静まる空間。
その隙を見て、久遠がダッシュで逃亡した。
『……………』
その後ろ姿を、もはや遠い目で見守るA。
熱を持った頬を、そっと結が濡れタオルで押さえてくれた。
「大丈夫か……！？」
『軽い打撲』
「もーマジ焦った！てか早く手当てしにいかないと！」
「ほんとだよA〜！！やめてよもう〜！！」
Aのもとに来た潔や蜂楽も加わって結と3人でわちゃわちゃしている。
当の本人は何事もなかったかのようにしているが。
「俺が連れてく」
『え』
突然腕を引っ張られる感覚。
振り返ればそこにいたの千切で��ちょっと面貸せ��という目でこっちを見ている。
途端それに嫌な顔をしたAだったが、引き摺られるように千切に連行された。
．
「……………」
『……………』
「……………」
『(……気まずい)』
連れてきてくれた割には一言も喋らない。
ただ黙って千切は手を動かす。
マネージャーが選手に何やらせてんだよ、とAは自分が情けなくなってきている。
しかも相手は千切。
そう、あの一件以来まだ和解していません。
「……………ありがとな」
『……………………ん？』
ぽつりとそう言った千切の声に、たっぷりと間を置いてしまった。
なんでって、��なんで？��って思ったから。
ありがとうはこっちのセリフだ。
『なんで？』
口に出てた。
「お前の言葉がさ……ずっと残ってたんだ…」
作業する手元に視線を落としながら、そう千切は言う。
なんて返せばいいのかわからず、『あー…』とAは口籠った。
「…………そのおかげで、俺はまた走る事ができた」
『嘘。潔くんに感化されたんでしょ？』
「それもある。でも、お前の言葉で気づけた」
「_________俺はまだ、走れるって」
『………うん』
羨ましいと思った。
そうやって走れる事に。
熱くなれる事に。
『私の方こそありがとう』
ピタリと止まった手に不思議に思って見上げれば
驚いた顔でこちらを見下ろしていた。
『何ですかその顔』
「いや…お前ほんとに朔夜かって思ったけど、その感じやっぱ朔夜だわ」
『はあ』
喧嘩売ってんのか
．
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作者名：noon | 作成日時：2023年4月21日 0時
