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その後調子の良い久遠がハットトリックを決め前半終了。
有利からチームZには活気が満ちていた。
だが、Aは前半のプレーに何か引っかかるものを感じて首を捻っている。
それはこの……
『お疲れ様です』
「え？ああ、ありがとう……なんか、珍しいな」
目の前にいる久遠が決めたゴールに、ちっともワクワクしなかったせい。
黙ってじっと見上げれば、圧に耐えきれず「な、なんだよ……」と少し怯むのに気がついて、さっと視線を外す。
せっかく調子が良いんだ、それを邪魔してはいけない。
そう思って、拭いきれない違和感を持ちながらも後半戦が始まる_________
すぐ一点をチームWに返された。
それは見事な鰐間兄弟のプレーに、Aはやはりワクワクするのを覚える。
だから、やっぱりおかしい。
「雷市！一旦戻せ！」
「落ち着こう！まだ2点差ある！」
さっきからそう声を張り上げる久遠が、前半と比べ大分動きが悪くなっている。
さらには致命的なパスミスまで起こしたところでチームWが得点。
スコアは2-3だ。
更には。
『(……チームWの動きが良すぎる)』
フォーメーションを変えて攻めているチームZは、おそらくそれが作戦なんだろうが
たった今、國神と蜂楽、そして潔が前線に出たばかりだというのに完全に対応してきている。
そして極め付けは
『あれワザと？』
「え？」
久遠の能力なら、確実にボールをクリアできたはず。
それなのにまさかの空振り。
そしてすかさず鰐間がゴールを決めた。
気づいてないであろう結は目を丸くしてなんのことだか分からない顔をしている。
だがその一連の出来事を踏まえて、Aは一つの考えが頭をよぎっていた。
「久遠……お前………裏切ってんのか……？
チームZのこと………」
そう言った潔の言葉は、たった今Aが辿り着いた答えと一緒で
「そうでーす、バレたからもういいでしょ？久遠ちゃん？」
あっさりとそれを打ち明けた鰐間。
_________本当に、久遠は裏切っていた。
しかもチームZの作戦も武器も弱点も全て話し、この裏切りを持ちかけていたというのだ。
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作者名：noon | 作成日時：2023年4月21日 0時
