あの日手放したものをもう一度【ブルーロック】 (ページ25)

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そして始まったチームW vs チームZ

チームWの重要人物である鰐間兄弟らのキックオフで開始された試合は、

息のあった二人のコンビネーションであっという間にゴール前までつめられていた。

DFには潔と千切。

Aは手元のデータに目をやる。

そこに書かれていたのは、鰐間兄弟と千切の出身校。

『(……そういえば、この3人一緒なんだよな)』

年齢的に先輩と後輩にあたるのか。

「千切ってあのガラスの天才くんかぁ？」

そんな事を考えていたら、案の定本人たちも気がついたらしい。

「おいおい、いいのか？そんな全力で走ったらまたぶっ壊れるぞ、ガラスの足が！」

「う……」

二人を止めようとした千切の瞳が揺らぐ。

それにピクリと眉を動かすA。

抜かれそうになる直前で、ファウルギリギリで潔がボールを奪った。

そのままボールは今村へ。

「俺はサッカーを諦めたくなくてここに来たんだ！
人生変えるために＂青い監獄(ブルーロック)＂にいるんだ！」

『潔くん……』

千切に向かって叫ぶ潔の声が、Aの耳にハッキリと聞こえる。

そしてそのボールは五十嵐へ

「俺たちはストライカーだ……！
悔しいのも苦しいのも何もかも_________」

五十嵐から久遠へ

そして_______________

「ゴール一撃で生まれ変わる。
過去なんかどーでもいい！
俺が見たいのはお前の＂今＂だ！！」

ボールがゴールネットを揺らした。

「しゃあ！」と声を上げる久遠に集まる仲間達。

だが潔だけは千切を見ていた。

そしてAもまた、そんな二人を見つめる。

「俺たちは泣いて諦めるために＂青い監獄(ここ)＂にいるワケじゃないだろ」

『(……やっぱりそうだ)』

それはAの中で漠然としていたものが、確信に変わる。

『(潔くんは……人を変えられる力がある)』

それは意志の強さなのか、言葉の力なのか。

はたまた、彼という存在が周りを巻き込む力があるのか。

今の言葉が千切にどう響いたのかはわからない。

だがAにとっては心の奥底が疼くような……そんな感覚がした。