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「失くす覚悟の無い人間に夢なんか掴めるワケない！！」
「………お前に、俺の何がわかんだよ」
『(あ、ヤバ)』
やたらとクリアに聞こえたその声に顔を上げれば
驚いた表情の千切が目の前にいた。
「朔夜……！？いたのかよ……」
最初こそ驚いていたが、すぐに話を聞かれていた事を悟り苦虫を噛み潰したような顔になる。
だが、すぐにその顔を背けて去ろうとする千切に
気がつけば声を掛けていた。
『逃げんの？』
「………あ？」
声に出していた言葉は物凄く煽るそれで
案の定千切は不機嫌そうに振り返る。
その視線の先にいるAはいつも通りの無表情。
だが、A自身は自分の中から湧き上がる黒いもやもやしたものを感じていた。
『そんな理由で��
「マネージャーのお前には一生わかんねえだろうな」
いつ壊れるか分からない右足。
それと共に消え去ってしまう夢。
………その恐怖。
『…………………知ってる』
「……は」
『でもまだ走れるんでしょ」
「………お前、どういう意味だ？」
『なら良いじゃん』
「……！」
見上げてくるAの空色の瞳と目が合う。
その目の奥で揺れるものが、あまりにも暗く、重い。
『ふざけんな馬鹿』
それは、Aにしてみればあまりにも幼稚で乱暴な言い方だった。
だが短い間ではあるが、Aという人物を見て来た中で一番感情の込められたその声に
千切はただ目を見開き、吐き捨てて去っていくAの背中を見ることしかできなかった。
．
未だ鳴り続ける心臓を落ち着かせるように、トントンと軽く叩く。
Aの脳裏にフラッシュバックするあの日の光景。
世界が真っ暗になった、あの瞬間。
生きている意味すら感じれなくなった。
それは��絶望��という言葉では収まりきれないほどに。
『…………ムカつく』
溢れ出す黒いモヤモヤが、止まらない。
また怪我をするのが怖い？
サッカーや夢を失うのが怖い？
そんな甘ったれた事言うくらいなら、最初からここに来ないで欲しかった。
その醜い感情の正体
それは��嫉妬��だ。
．
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作者名：noon | 作成日時：2023年4月21日 0時
