21.彼らの未来を。 ページ22
「ね、根津校長。
それは、研究のためです。」
「200ロットですよ？
多すぎるでしょ。」
「だから何だと言うんです。
こんなもの、うちが感染源だと言う証拠にはならない。」
『、！出た！！
持ってくね、！』
キットを持ってオフィスに向かい走る。
「行ってこーい！！A、！」
「ごめん、私用事あるから帰るね！」
「あ、お疲れ様ですミコトさん。」
「これ以上の話は、その時に伺います！」
『ノックも挨拶も省略で失礼します！！
解剖終わりました！』
「お疲れ様でした！」
「おや、糀谷さんだね！」
『こんにちは根津校長。
門野ゆうじさんの肺から、MARSコロナウイルスが検出されました！！！』
「出ちゃいましたか。」
「門野？」
『東央医大で亡くなった入院患者さんです。
国立感染症研究所にも検体を届けました。』
「誰の許可で、！！」
院長をキッ、と睨む。
『ご遺族の許可です！！
…抗体の変化の段階を調べれば、感染からのおおよその時期が分かります。
高野島さんの検体と比べれば、どちらが先に感染したのかも。』
院長は先程までの余裕が無くなっている。
『ウイルス漏れを隠すということは、名前のない毒をばら撒くのと同じことです。
死ななくていい人が大勢死んだ。』
馬場さんの悔しさを思い出して、涙腺が緩む。
『せめてこの先は、賢明なご判断を。
…それから、高野島渡さんの名誉の回復を、お願いします。
ご遺族が、これから生きていくためにも。
彼らの、未来のためにも。
どうか、よろしくお願いします。』
深く、深く祈り込めて頭を下げる。
「…まあ、認めるべくは認めて、会見しちゃいましょう。」
東央医大の院長が出て行ったあと、根津校長に神倉さんと2人で事情を説明する。
「なるほど！よくわかったよ。
門野さんの遺族の方々がクレームを入れたんじゃ無くて、火葬場の人からの通報だったからね！」
『大変申し訳ありませんでした…。』
「いやあ、すみません。
あの、バイト取り止めとかは…」
「大丈夫さ！
そんなのは要らないのさ。
君の死因究明への熱意が十分に伝わったよ、これから先も頑張って欲しいのさ！」
「『あ、ありがとうございますぅぅぅ…！！！』」
神倉さんと2人で深々とお辞儀した。
根津校長、素敵。
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作者名：mana | 作成日時：2021年7月1日 1時
