15.絶望なんて。 ページ16
夜になって私は喪服を着用し、高野島さんのお葬式へと向かう。
家は1人暮らしなので特に問題はなく、ミコトと一緒に葬式場に行く。
先に着いて中でご遺族を待っていると、外からマスコミ達が高野島さんのご両親に群がっていた。
マスコミは人の不幸を取らないと生きていけないのか。
「これからもっと死人が出ますよー！！」
亡くなって弁明のできない人に向かい、不条理な言葉を浴びせる人達。
遺族の方が何をしたというんだ、と眉をひそめた。
ご遺族と挨拶を交わす。
申し訳なさそうに、苦しそうに、高野島さんのことを話す。
「息子が無理をして帰国したのは、会社を休んではいけないという気持ちがあったからだと思います。
子供の頃から私は、風邪ぐらいで学校を休むな、と。我慢強い男になれ、と。
そう言い聞かせて、育てました。」
「間違えてたのかなぁ。
あの子、頑張り屋さんだから。
頑張りすぎちゃったのかな、。
、本当にすみませんでした。」
弱々しく頭を下げるご両親に、こちらも深く頭を下げる。
馬場さんが、御住職がいらっしゃった、とご遺族に告げる。
遺族の方が居なくなってから、馬場さんがこちらを向く。
「この度は…」
「渡さんは無実です。証拠があります。」
そう言って、渡さん名義の健康診断書の結果を渡してきた。帰国した3日後に受けていたそうだ。
「結果は全て良好で、異常なし。」
『…検診で、コロナウイルスの検査はしません。
見つからなくて当然です。』
「彼は常識的な人でした、！
風邪の自覚症状があれば、絶対に空港で申告したはずです。」
「自覚症状がいつからあったのか、証明するのは難しいと思います。」
信じられない、と悲壮の顔でこちらを見つめる馬場さん。
ごめんなさい。
でもこれが私達の仕事であり、真実なんです。
「ごめんなさい、今より…、もっと辛いことになるかも知れません、。」
馬場さんの目から涙が溢れる。
本当にごめんなさい、でも私たちは
『…検診を受けた大学病院には、免疫力の落ちた患者さんが大勢います。
感染は、彼らの命に関わります。
高野島さんが、どれだけの人数と接触し、感染を拡大したのか。
調べないといけません。』
絶望してる暇なんてないから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 26人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：mana | 作成日時：2021年7月1日 1時
