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■４４■ ページ46
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｢……｣
彼が、真田が屋上を訪れるなど、珍しいことだった。
幸村が丹念に育てた花を横目に、ふらふらと花壇の横を抜けていく。
耳の奥に自らを嘲るような、そんな笑いがこだまする。頭が、胸が、どんどん痛くなる。
恐怖と苦しみが彼を襲う。身震いした体と共に、ひっと彼らしくもない声が飛び出した。
こっちへおいで。
何かが、真田を手招いた。
(……ああ……そうだな……)
初めから必要とされていないなら。皆がいらないと蔑み、自らを追い出すなら。
その言葉通り、消えてやろう。
｢……はは……｣
楽に、なりたい。
疲弊しきった彼の心が、そう言った。
もう何も聞こえない。もう、何も抑えられない。厳格な自分など、今はもうどこにもいない。
がしゃ、がしゃ、と音を立たせ、フェンスを越えて。
そして。
｢＿＿＿＿＿＿、……｣
大きな体と黒い帽子が、空を舞った。
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作者名：幻想曲 | 作者ホームページ：http://uranai.amanoboru
作成日時：2015年9月10日 3時
