最後のふたり。 (ページ3)

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「A」

ふと声をかけられて後ろを向くと、そこには大好きな人。

「ギョンス！どーしたの！」

慌ててギョンスに抱きつこうとしたら
腕をガシッと掴まれた。

「A、久しぶりだね。元気？」

あ、今日は眼鏡だ。月曜日だから？めんどくさいよね、月曜日はコンタクト入れるのも。身だしなみに気をつけるの。

「うん！元気！元気元気！ギョンスに会ってさらに
元気！」

ほんとだよ。最近、いいことなかったけど
ギョンスに会えて一気に元気になった。

「相変わらずだね、Aは」

そういって、私の大好きな笑顔で笑うギョンス。
この笑顔だけはずっと変わらないでいてほしいなって思ったり、
でも、この笑顔も彼女に見せてるんだと思うと心臓がチクっと痛んだ。

いいなあ、ギョンスの彼女。
ギョンスのこと、独り占めできるんだもん。
いいな、いいな。

「A、ご飯ちゃんと食べてる？洗濯は？
掃除は？」

あ、この顔は私のこと心配してる顔だ。
そうやっていつも私の心配して、お世話してくれたのに。
「Aは僕がいないと、生きてけないね」
って呆れたように笑ってくれたのに。

「ギョンス君！」

ギョンスがいないから何もできないって言おうとしたのに
それを遮ったのは可愛い可愛いギョンスの彼女だ。

私より身長は低くて、お目目がまんまるで、髪の毛がサラサラで、天使みたいな顔してる。

「ギョンス君、4限入ってる？？」
「うん、サランは？」
「そっかあ、私入ってなくて。一緒に帰ろうと思ったのに…」

明らかにシュンとする彼女、可愛い。私がギョンスなら惚れてる。多分。でも、私がギョンスなら私のこと見捨てないけど。

「また、夜電話するね。バイバイギョンス君」

しょぼんとしたまま無理やり笑顔を作った彼女は
見事に私を視界に入れることなくその場を去っていった。
名残惜しそうに去ってく彼女を見つめるギョンス。

はーー。そんな顔、しないでよ。

「ギョンス！私だいじょーぶだよ。ギョンスがいなくてもちゃーんとできてるよ」

「ほんとうに？」

私がそう言うと疑いの表情を見せたけど、安心したようにギョンスは笑ってくれた。
ばか、ギョンスがいなくて私が成り立つと思ってるのか。
私の嘘にいち早く気づくのはギョンスの得意技でしょ。

「いなくなったって、僕はここにいるけどね」

なーんにもわかってない。
私が大好きなギョンスはもういなくなったのに。

ーー
ー