外側と内側 ページ40
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この1ヶ月間、ほぼ毎日Aは虎杖に会っていた。
宿儺の件もあり、虎杖との距離を置いていた彼女だったが、
五条だけでなく、家入や伊地知にも頼まれた手前、断ることはできなかった。
『…』
ハァッ、ハァッ、と息を切らして、
膝をつく虎杖の前に立ち、様々なことを教えた。
しかし、
___呪術師とは、どうあるべきなのか。
彼女はそれを虎杖に教えることはなかった。
『虎杖。少し休憩しようか。』
教えることができたのは呪力操作や基本体術だけ。
渡された水をグビグビ飲みながら、虎杖はAに尋ねる。
「ねぇ、俺ってどのぐらい弱い?」
その質問にAはすぐに答えた。
『んー、私が術式使わずに勝てるぐらい弱い。』
「ま、まじか。」
落ち込んでいる、というより虎杖はそれを受け止めていた。
しかしAも、五条と同じようにわかっていた。
いずれ宿儺の術式が虎杖の身体にも刻まれることを。
『でも呪力なしだったら、もしかしたら私より強いかも。』
「ま、まじ!」
キラキラと顔を輝かせる虎杖。
『いや、ごめん、ちょっと盛った。』
「盛らないで!期待しちゃうから!」
しかし、すぐに落胆する。
ちょっと喜んじゃったじゃんか、と言う虎杖を見て、
Aは少しだけ笑ってしまった。
コロコロとよくここまで感情を出せるものだ、と。
そう思っていると、虎杖が自分を見ていたことに気づく。
「…」
『?』
「俺、Aさんが笑ったところ初めて見た気がする。」
虎杖がそういうと、彼女の顔からスンッと笑顔が消える。
「あっ、あっ、ごめんなさい!変な意味じゃないから!」と、
必死に謝りはじめる虎杖を見て、Aはまた笑った。
「ずっと嫌われてるかと思ってた。」
そういった虎杖の前に、Aはしゃがみこんだ。
そして虎杖と目を合わせる。
『…』
その目の奥には宿儺がいる。
きっと今も、私を見て、嘲笑っているんだろう。
『…嫌ってはいない。』
「…」
コツンと人差し指で虎杖の胸元に当てた。
ばく、ばくと虎杖の心音が響く。
今ここで虎杖を殺せば、何本分かの宿儺を殺すことができるんだ。
でもその選択はできない。
『ただ、貴方の中にいるソレが苦手なだけ。』
「…」
『さて、再開しようか。』
彼女は虎杖の頭をくしゃくしゃ、と撫でて立ち上がった。
伏黒とは違い、少し硬い髪質だった。
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.(プロフ) - レナさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまって申し訳ございません。これからもよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
.(プロフ) - ツバキさん» 読んでくださり、ありがとうございます。これからも少しずつ更新していくのでよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
.(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます。更新は遅くなりがちですが、これからもよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) @page37 id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!次の更新楽しみにしてます!!! (9月24日 15時) (レス) @page37 id: 804790a45e (このIDを非表示/違反報告)
ツバキ(プロフ) - 面白すぎて一気見ました!!最高です更新楽しみにしてます! (9月19日 21時) (レス) @page37 id: 340cc653a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:. | 作成日時:2022年8月30日 22時