瘡と蓋 ページ22
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『それで、なにか用があって来たんじゃないのか』
抱きついている五条の腕を払いながらAは尋ねた。
五条「今日も相変わらず塩対応で可愛い」
『塩対応…?』
五条「んーん、気にしないで。」
Aは現代の俗語が上手く通じないところがあり、五条の言葉に眉をひそめる。そんな彼女を見ながら五条はまた口角をあげた。
五条「今日はちょっと一緒に来てほしいところがあるんだ。」
Aはさらに眉をひそめる。
『来てほしいところ?…そう言って、自分の仕事を私に押し付けてきたのは何回あったか覚えているか?五条。』
五条「今回は違うよ!」
ハキハキと答えた五条に、『今回は、って…』と、Aはため息をついた。
五条「Aと会いたいと言ってる知り合いの教授がいてね、それなりに信用できる人だから会ってもらいたくて。」
『…教授?』
五条「そ。表向きは史学者とか考古学者だけど、実際には呪術を研究してる人で、割と有名人」
『…』
「ちなみに高専時代は夜蛾学長と同期だったらしい」と、五条は喋る。Aは表情を何一つ変えずにその話を聞いていた。
五条「(……ほんと、何考えてるのかわかんないね、この子は)」
と、五条はAの顔を見て、心のなかでそう呟いた。
五条「じゃ朝早いけど今から行こっか」
『え』
五条「あの人、きっとモーニング食べてる頃だろうし。」
『…ちょっと待て。』
Aの表情は少し焦っていた。あまりさっきと変わらないように見えるが、目の奥が少しだけ揺らいでいるようにも見える。
『その教授が、私に会いたがってる理由はなんだ。』
不安。
今、六眼で読み取れる彼女の感情はそれだった。
五条「君の存在について、だよ。」
『…』
自分自身を知られることだけが怖いわけじゃなかった。
宿儺に告げられた言葉から知った真実___
今は自分自身を知ることすらも怖くなっていた。
五条「ちなみに、山縣村の一件が終わった後、上層部に報告しなくちゃいけなくてさ、さすがに君自身のことを上層部に馬鹿正直に話せないから協力してもらったんだ。」
『…』
五条「そのぐらい信頼できる人だよ____といっても、あんまり気乗りしてなさそうだね。」
五条は目を伏せているAの頭を撫でた。
五条「大丈夫。二人で会わせたりさせないから。」
『(…そうじゃないんだがな)』
Aはまた自分の気持ちを胸の奥に押し込めていた。
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.(プロフ) - レナさん» コメントありがとうございます。お待たせしてしまって申し訳ございません。これからもよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
.(プロフ) - ツバキさん» 読んでくださり、ありがとうございます。これからも少しずつ更新していくのでよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
.(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます。更新は遅くなりがちですが、これからもよろしくお願いします🙇♀️ (10月4日 22時) (レス) @page37 id: e37fca8de3 (このIDを非表示/違反報告)
レナ(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!次の更新楽しみにしてます!!! (9月24日 15時) (レス) @page37 id: 804790a45e (このIDを非表示/違反報告)
ツバキ(プロフ) - 面白すぎて一気見ました!!最高です更新楽しみにしてます! (9月19日 21時) (レス) @page37 id: 340cc653a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:. | 作成日時:2022年8月30日 22時