声の似ているお隣さん ページ10
今日の帰りは遅い。私はトーク画面を開いて、頭を悩ませた。帰りのバスでずっと頭を悩ませていた。書いては消して。好きな人にメールを送るような感覚。結局何も送れないまま。流石に、藤山さんに会う偶然はないだろう。もう夜の１０時だし。
部屋に帰って色々済ませて、一息つく。お風呂上がり。火照った体を冷ますように、窓を開けてベランダに出た。
「うーん、ちょうどいい」
緩い風が火照った体を撫でた。明日が休みだったら、お酒も飲むのだけれど、こんな時間に飲んだら明日の仕事に響いてしまうかもしれない。そして、隣の、藤山さんの部屋から何かが聞こえた。
「藤山さんの、声……？」
何かを喋っているようだが、聞こえない。藤山さんはゲームする人みたいだし、もしかしたらゲーム友達と通話とかしてるのかもしれない。私にはいないけど、羨ましいなあ。
「でもどっちかと言うと、一人用のゲームを横で見てくれる方が楽しいかな」
ふたりで同じことを考えられるから。元彼はそんな人じゃなかった。次に付き合う人は、そんな人がいいなと思ってみたり。急に恥ずかしくなって、私は部屋の中へ戻った。藤山さんとゲームしてみたいなあ。しばらくして、藤山さんの声は聞こえなくなった。終わったのかな、と考えていると、スマホが鳴った。
「藤山さんだ」
ふふ、と無意識に顔が緩む。「昨日は晩御飯ありがとうございました。またお話しましょう」と書いてある。良かった、昨日は気に障った発言をしたわけじゃないみたいだ。そう思いたい。いやそう思うようにしよう。
「またご飯食べに来てください、と……」
隣に住んでいるけれど、しょっちゅう家に入るわけにはいかないし、せめてメッセージアプリでだけでも、藤山さんと仲良くなれたらいいな。新しいお友達。そう思うだけでも心が踊る。明日も早いのでもう寝ます、と書いて送った。「おやすみなさい」と一言。
「さてと……寝るか……」
布団に入り、スマホを充電器に挿した途端、ピコン、と通知音が鳴る。なんだよ、と思い見ると、別のSNSの通知だった。
「生放送かあ……聞きながら寝よう……」
通知をタップした。
「やっぱり、藤山さんと声が似てる」
もしかして、本人だったりして。なんてね。そんな小説みたいな偶然、ある訳ない。
「うわあ……だめだあ……」
そのままうとうとして眠ってしまったので、内容は覚えてない。でも生きる気力を貰った。何故か藤山さんの顔が思い浮かんだのは、どうしてだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「実況者」関連の作品
転生したら推しに嫌われているんだが… ２【学パロ】
【HOTEL PETRICHOR】恋と雨は紙一重【WT】
【短編集】好きだよ、ずっと。【実ｼ兄者】【unei】
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たたた - これを探していたんですよ！？！？運命…！？愛読してます…ありがとうございます… (2021年10月20日 23時) (
レス) @page40 id: d4b8270ffa (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ - なんだこの神作品は…質感が素晴らしすぎる (2021年10月5日 18時) (レス) @page42 id: 73805a2461 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん(プロフ) - 550さん» 修正しています。ありがとうございます (2020年8月30日 8時) (レス) id: 19a7823a34 (このIDを非表示/違反報告)
550 - 告白とお隣さんの所 相手の名前が表示されていないです。 (2020年8月30日 6時) (レス) id: 56664050fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷりん | 作成日時：2020年7月20日 12時
