声が聞きたいお隣さん ページ36
その日の夜、私はスマホを凝視して、藤山さんのトーク画面を開いていた。トークは止まったままだから、既読も何もつかない。恋人らしいことってなんだっけ、と思って思いついたのが、電話を掛けること。これは付き合う前にやっていたが、ほんの少しだし。今日はちょっと、声が、聞きたかったって……言ってみたくて。ご飯も食べてお風呂も入って、あとは寝るだけという状態。よし、準備はOKだ。通話ボタンをタップする。そして気づく。聞いた方がよかった。電話してもいいか。けれどもう遅い。
「も、しもし？」
「え、あ、出た、もしもしっ？」
上擦った声が出て恥ずかしい。藤山さんの眠たげな声が聞こえた。寝てたのかな。だとしたらやっぱり聞いておくべきだったし、悪いことをしてしまった。
「Aさん、だ」
「っ、ええ、そうです……ちょっと、藤山さんの声聞きたくて」
「……恋人、みたいですね」
「恋人、なんですよ」
なんて生産性のない会話なんだろうって思うが、藤山さんの声が聞けるのならなんだって良かった。電話越しから聞こえる布擦れの音。んん、と彼が咳払いをした。
「……あー、Aさんの声、寝る前に聞けるから、夢かと思いました」
はっきりと喋る藤山さん。もしかして眠かったところを、目覚めさせてしまったのだろうか。すぐに切ってしまおうか。
「隣に住んでるのに、こうして電話してるのおかしいですね」
「まあ、あはは、俺は全然、Aさんの声聞ければなんだっていいです」
「言ってて恥ずかしくないですか？」
「……めっちゃ顔、熱いです」
見たかった。私も布団に潜って、藤山さんと決まった話題をするわけでもなく、時折無言になってお互いの呼吸を聞いたり、一言二言会話を交わしたりしていた。
「Aさん、眠いです？」
「う、ん……寝ようかな……」
「俺も寝ますよ。また明日」
「……んふふ、また明日」
自分でも変な声が出たけれど、もうそんなこと気にならないくらい眠くて。おやすみの声を聞いて。それだけで、明日も頑張れるし、ぐっすり眠れる気がした。
「おやすみなさい」
いい夢見れそうです。私は。同じ夢を見たい。
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たたた - これを探していたんですよ！？！？運命…！？愛読してます…ありがとうございます… (2021年10月20日 23時) (
レス) @page40 id: d4b8270ffa (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ - なんだこの神作品は…質感が素晴らしすぎる (2021年10月5日 18時) (レス) @page42 id: 73805a2461 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん(プロフ) - 550さん» 修正しています。ありがとうございます (2020年8月30日 8時) (レス) id: 19a7823a34 (このIDを非表示/違反報告)
550 - 告白とお隣さんの所 相手の名前が表示されていないです。 (2020年8月30日 6時) (レス) id: 56664050fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぷりん | 作成日時：2020年7月20日 12時
