メッセージとお隣さん ページ11
Aさんとはしばらく挨拶するだけの状態が続いた。メッセージアプリで話す機会は少しあるが、それでも、雑談というほどの内容ではなかった。俺もそこまでまめに返す方ではないし。Aさんとはもっと話したいけれど、実況者であることがバレたら怖いとも思う。仲良くはなりたいんだけどな……俺がここまで思うのはあまりないかもしれない。
「わ、え、Aさんから連絡きた！」
木曜日の夕方。おそらく定時で帰っている途中だろう。Aさんから連絡がきた。ああちょっと待ってめっちゃドキドキする。何でこんなドキドキしてるんだ俺。久しぶりにこんなに人と関わってるからだな。きっとそうだ。
「明日晩ご飯一緒に食べませんか……ってうおお！ まじか！」
思わず大きな声を出してしまった。ひとりで虚しいがそんなことは実況撮ってる時点で慣れてる。もう気にしたことはない。既読はまだつけていない。トーク画面を長押しして、その内容を何度も見返した。「ちょっとだけお酒も飲んじゃいましょう」と。ええ！？ ちょっと年頃の女性が宅飲みしましょうとか言っちゃうのダメじゃない！？ でもめっちゃ行きたい！ 俺お酒弱いけど！ どうしようどうしよう……。
「うう……行きます！」
そんなに飲まなきゃいいし！ というかAさんお酒強そうだから俺が潰れるわけにはいかない！ カッコ悪いし……顔がとても緩んでしまう。えー……めっちゃ楽しみ。晩ご飯作らせてばかりで悪いし俺も何かおつまみとか持って行こうかな。ああまずは返事しなきゃ。「おつまみとか持って行きます」と送って、布団の上にスマホを投げた。まるで学生時代に戻ったみたいだ。好きな子からメールが来たみたいな。というかみんなそう思うよね？ 俺だけじゃないよね？ Aさんがそう思ってるとかじゃなくて日本全国の男子は体験してるよねこういう気持ち。
「はああ……めっちゃ楽しみ……」
俺がバタバタと悶えていると、隣の部屋からドアの閉じる音がした。あ、帰って来たのかな。Aさん。えっ、俺今何考えた？ 気持ち悪くない？ 何帰って来たのかなって。はああ……俺まじでおかしいだろ。あー、明日の帰りはおつまみ買っていこう。友達ができて、嬉しいだけだ。だから、ちょっと覗かせたこの感情を、その思いでかき消した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たたた - これを探していたんですよ！？！？運命…！？愛読してます…ありがとうございます… (2021年10月20日 23時) (
レス) @page40 id: d4b8270ffa (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ - なんだこの神作品は…質感が素晴らしすぎる (2021年10月5日 18時) (レス) @page42 id: 73805a2461 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん(プロフ) - 550さん» 修正しています。ありがとうございます (2020年8月30日 8時) (レス) id: 19a7823a34 (このIDを非表示/違反報告)
550 - 告白とお隣さんの所 相手の名前が表示されていないです。 (2020年8月30日 6時) (レス) id: 56664050fd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぷりん | 作成日時：2020年7月20日 12時
